2016.3.2 【新世紀落語の会@繁昌亭】

【新世紀落語の会】

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新世紀落語の会は1999年から続く新作の会で、最近では東京でも開催されているらしい。演者の皆さんは毎回変わるんだけれども、この会の特徴は、例えば今回でも九雀さんや吉坊といった新作のイメージがあまり強くない人や南湖さんのような講談の人が出たりと、演者の幅が結構広いことかなと思う。寄せてもらうのは約半年ぶり。今日もなかなか楽しみな演目が並んでいた。

三語 / 青い瞳をした会長さん
吉坊 / 重陽
三歩 / ないしょ話
仲入り
南湖 / 血染めの太鼓
九雀 / ラスト・ソング

三語さん、何度か聴いてる。上がってすぐに自己紹介を4度も続けて、その都度くる拍手が段々小さくなる。聴いてる方のテンションも同じように小さくなってくるのであまりしない方がいいかなと思う。
でもネタに入ると非常に聴きやすい口跡だ。三枝作の結構有名な噺だけれども楽しく聴くことができた。

続いて吉坊。「重陽」は東京で喬太郎さんと吉坊がやってる文学しばりの会で喬太郎さんがかけた噺。今日は吉坊初演だったらしい。小泉八雲が原作で、それを喬太郎さんが脚色てなってるけど、遡れば雨月物語、さらに中国の古い話につながるらしい。ちょうど2月に出た喬太郎さんのこの噺の入ったCDが今日届いたので聴いてから落語会に向かった。それがどうだったかは今日は別の話にしておく。
噺は播磨の国と出雲の国をつなぐ武士の義兄弟の物語で、前半は静かに進む。二人の仲の良さが伝わってくる。兄は9月9日の重陽節句、菊の節句に帰ってくると言って、自分の国の出雲に帰る。そしてそこでとんでもないことが起きる。重陽節句の夜遅く、兄は帰ってくるには帰って来たけど実はもう…。
この中盤で噺の空気が変わり、微妙な雰囲気が支配しだす。噺が宙に浮いているような感じだ。
そして、憤った弟が出雲に向かい一気に激しい展開に。
最後は、噺の流れをスコンとひっくり返して落語らしい地口の下げ。いい噺だった。
前半~中盤~後半と印象が変わっていく流れが、吉坊とてもうまかったと思う。それと吉坊が新作でよく使う虫笛も効果的だった。
あと、ひとつだけ言うとしたら、出雲の悪人役をもっとにくたらしくみせて欲しかったな。

中トリは三歩さん、何年ぶりかだけど歯のない話と着脱式結び柏のまくらは同じ。そこから和歌山のおおくわというスーパーから文化貢献賞をもらった話が長かった。
ネタはこれも三枝作だけど、三歩さんのはじけっぷりがかなり面白かった。
吉坊の高座をまったく色合いの違う噺ではさむ。これも新作の会の楽しさだ。

仲入り後は南湖さん。「血染めの太鼓」は兄弟子の南北さんが広島商業時代に応援団で太鼓をたたいていて、同級生の野球部に達川がいて、甲子園であの江川と対戦して勝利する話を、南湖さんのどこまでが本当か分からない絶妙の語りで聴かせる。
しかし、いつも思うけど南湖さんのあっさりしているのか粘っこいのかよく分からない独特の語りが聴いてると段々くせになってくる。そしてあのビジュアル。旭堂南湖ていう一つの作品みたいだ。
そら映画スターやもんな。

最後は九雀さん、「ラスト・ソング」は辞世の句の噺。今も京都で開催されてる小佐田さん作の新作の名前をお客さんがつける会でかつて九雀さんがかけた噺らしい。で、実はそのアイデアを小佐田さんに提供したのが九雀さんで、それ以前から古典の改作をかけて名前をつけてもらう会をやっていた。その結果、今の「御公家女房」とかの演題がついたと。それは知らなかった。
噺は、浅野内匠頭の辞世の句は実は辞世屋という商売が創っていたという話から、いろんな商売用の辞世の句が次々に登場し、九雀さんも言ってたけどまるで大喜利のようだった。
そこからの下げもよく工夫されてて面白い。
九雀さんで聴くの初めてだったけど、もっと掛けてほしいなと。

今日は正直、九雀さん、南湖さん、吉坊の三人目当てで行ったのだけど、みなさん面白かった。がらりと出演者が変わるので毎回来るというわけにはいかないけれど、また機会があれば参加したい。