2016.3.1 【いきなり九雀の日@岡町・伝統芸能館】

【いきなり九雀の日】

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九雀さんのお弟子さん、九ノ一さん。今日3月1日で正式に内弟子スタートそうだ。そして九雀さんが枝雀さんに入門したのも37年前の今日。更に高橋まきさん(お囃子さんで奥さん)のもとに岡野鏡さんが入門したのも1年前の今日。で、今日は九ノ一さんの初高座。いつもの会場が九ノ一さんの関係者も詰め掛けたため満員だ。
九ノ一さんどんな落語を聴かせてくれるのかとても楽しみだった。

九ノ一 / 東の旅-発端
九雀 / 道灌
由瓶 / じゅうじゅう亭弁当
仲入り
九雀 / 三十石夢通路

九ノ一さん、関係者でない僕ら普通の落語ファンは、おそらく誰も顔も知らない。20歳の男子という情報しかなかった。最初に九雀さん出てきて九ノ一さんのことに触れるだろうと思っていたけど、いきなり出囃子は石段で、九ノ一さん登場。大きい、しかも丸刈り。第一印象からかなり迫力がある。始まった。発端だ。
調べたら、去年の今日、この場所で九雀さんがかけてる。確か入門36周年でということだった。
九ノ一さん、声も大きい。更にたたきのリズムもいい。初聴から九雀さんの弟子という色がよく出てる。僕は立て弁好きなのでこの噺も好きだ。初高座としては十分じゃないかと思った。また聴きたい。

九雀さん上がって、なぜ最初にこの噺を覚えるのかについて、一番大きいのは落語の息継ぎを覚えるため。たたきながらするからきちんと息継ぎしないとリズムが悪くなる。落語の息継ぎは人物が変わるところではしない。そうするとリズムが良くなってスムースに聴こえる。長時間聴いても疲れなくなると。なるほど、こういう話は演者ならではで聴き手はいくらたくさん聴いてもなかなか分かりにくい。
九ノ一さんは九雀さんが母校の箕面高校50周年式典で落語を一席した時、在校生でそれを聴いたのがきっかけで弟子入り。だから高校の先輩後輩でもあるわけだ。弟子をとって九雀さんがどう変わるのかも注目だ。

で、一席目は「道灌」。江戸ネタで向こうでは前座噺だ。上方でも時々かかる。僕の印象としては、少し回りくどい噺でこういうのが前座噺てのが江戸ネタらしいとも思う。でも上方では少ない侍系の噺だし使い勝手はいいのでは。九雀さんはストトンと軽快にはこんできっちり下げる。この下げも有名だけど落語らしい下げで好きだな。

続いて今日のゲストは由瓶さん、九雀さんが息継ぎを言ったことで、「あんなこと言われたらお客さんがそこに注目するからやりにくい。僕は好きなように息継ぎします」。ここで爆笑。そこから新幹線でクリーンに乗った時の話。これは聴きたいあの噺かと思っていたら、きっちり「じゅうじゅう亭弁当」。僕は由瓶さんの新作の人情噺系のネタ好きで、他にもそんな新作する人結構いるけど、かなり好き嫌いが分かれる。どうしてかなと思うに、人が透けてみえるからかなと今のところは思っている。
この噺聴くの二回目だけど、新幹線の中という移動する場所を舞台にして、そこで追いつくか追いつかないかのサスペンス的要素も取り入れたよくできた噺だと思う。この噺聴いた人はみんな同じだろうけど、じゅうじゅう亭弁当を食べたくて仕方がなくなる。でも新幹線乗る時なんかはほとんど売り切れなんだ。いっそ、早朝からわざわざ新大阪まで買いに行こうかと思っている。

仲入りはさんで、九雀さんは「三十石」。意外に九雀さんでは初めてだ。僕がたまたま聴いていなかっただけなのかな。聴いててふと気づいたけど、発端で始まって三十石で終わる。これも趣向なのかな。九雀さんの初高座の九ノ一さんへのはなむけだったのかな。
この噺はフルバージョンならかなり長い噺になるのだけど、いわばロードムービー的にエピソードが次々でてくるわけで、比較的尺は調節しやすいしよく掛かる。でも最近ほとんど舟唄だけをメインに据えた形でする人がいてやっぱりこの噺はある程度の長さででないと八軒家に着いた後の余韻が残らない。九雀さんは、女子衆妄想の場面でたっぷり爆笑とって、鬢付け油から舟唄とすごくバランスがよくて気持よく八軒家に着いた。

ともあれ、九ノ一さんの初高座は無事終わった。噺家さんみなさんまくらでよく「僕の初高座は〇〇で」と言われてるけど、九ノ一さんも将来そういう話されるのが今日現場にいたものとして楽しみだ。最近上方の若手も随分有望な人増えてきたと思っているのだけど、九ノ一さんもその一人だな。もちろん九雀さんはまだまだと思っているのだろうけど、これから九雀さんの弟子噺を聴くのも楽しみになってきた。