2016.2.21 【第四回・平成雀の会@茨木・唯敬寺】

【第四回・平成雀の会】

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去年32年ぶりに同じ場所で復活ということで話題になった枝雀一門会。第三回までことごとく来れずに、年が変わって今日の四回目でようやく来ることができた。場所は阪急茨木駅近くの唯敬寺。地図だと簡単そうなのに、実際にはややこしい。僕にしては結構迷って到着した。
前の方は座布団、後ろは椅子席というよくあるパターンで、限定90名とのことだったけど、実際には120人ぐらい入っていたのでは。とにかく超満員でスタートした。

あおば / 動物園
まん我 / 近日息子
九雀 / 宿屋仇
仲入り
南天 / 上燗屋
雀三郎 / 不動坊

あおばさん、しばらくぶりだけど何かくさくなってるな。粗いって感じもするけど、どうなのかな。動物園はワニバージョンだから南天さんからか。ワニ登場までもう少しスピーディーさが欲しいなと思った。

続いてまん我さん、「近日息子」はまん我さんでは初めて。よかったな。まん我さんの落語の特長はしっとり感、落ち着いた独特の色合いって思っているのだけど、今日はそうでなくて勢いがあった。くやみの場面での応対、会話にすごく疾走感 (あまり落語に使わない言葉かもしれないけど僕の感じ方を表現する最適な言葉なのです) があって、一緒に乗せられた。こういう普段とまた違う実感がその人を聴く姿勢を広げていくのだなと。

中トリは九雀さん、当然だけどいつもの岡町で聴いている時とこういう一門会ではまた違う。実は37年前、18才の時の初高座がこの同じ部屋だったと。楽屋には7才と2才の枝雀さんの長男次男、お囃子の枝雀夫人も三味線としてはデビュー間もない。そんな風景の中で「発端」をしたと。
で、ネタは「宿屋仇」。意外にも九雀さんでは初めて。九雀さん動きの大きな噺がすごくはまるので、始まった時聴いた気になっていた。今日は源兵衛が二人に盗人殺人を告白するところで、何かピカレスクな印象が乗り移ってるようでなかなかの迫力。また次聴く楽しみが増えたネタだった。

仲入り後は南天さん、昨日から二日連続だ。打上げの話題、酔っ払いの話から替り目かと思っていたら「上燗屋」。噺家さんは飲まなくても酔っ払いうまいけど、南天さんの酔っ払いはうまいを通り越して愛すべき酔っ払いで、この人の酒噺の世界を支配してしまう。
ただ今日はその場面で客席から「うまいな」と声が掛かる。南天さんスルー。もう一度同じく「うまいな」と声掛かる。南天さんうまく噺に取り込んで自然にかわす。客一言捨てゼリフ。当然南天さんスルー。まあ、こういう客がいるだけでこの会がまだまだ成熟してないことが分かるのだけど、南天さんは他の客が気持ちを乱されないよう見事な対応だったと思う。
ひょっとして、南天さんがまくらでいらった他の一門のファンだったのか。

トリは雀三郎さん、芸人の話が始まって「講談や浪曲では芸人を先生と呼ぶ」と。この流れだと噺は限られてくる。そして、遊芸稼ぎ人の説明。ああ、二日連続の 「不動坊」 確定だ。あれだけ聴けなかったのに、なんと冬の終わりに連荘で聴くことになるとは。でも好きな噺なので自然と取り込まれていった。雀三郎さんの落語はその一見アバウトそうで実はくっきりしている口跡が魅力だと思っている。この噺で言えば、風呂で他の客にはしゃぎまくる利吉や幽霊の場面でわちゃわちゃしているところがとても楽しい。

ということで、まん我さん、九雀さん、南天さん、雀三郎さんと落語四席とても強力でいい会だった。

ただ、落語会としては南天さんの時の迷惑な客以外にも不満はあった。とにかく寒すぎる。空調のない広い部屋に120人ほど入ってるんだけど、暖房器具は最前列に置いているストーブ1台だけ。ほとんどの人はコート脱がずに、中にはマフラーや手袋をしたままの人も結構いた。落語を聴く態勢としては頭が緩んだ方が当然楽しいわけで、防寒具つけたままでは身体が緩まないし、身体が緩まなければ当然頭も緩まない。
来た客みんな入れるのじゃなくて、90名限定としたらそれ以上入れずに、暖房器具をそこかしこにもっと設置すべきだと思う。それと男子トイレも久々の衝撃だった。
32年ぶりの復活は落語ファンとしてはとてもうれしいけど、当時と今では落語会のいろんな部分が相当変わってきていると思うので、次回以降にはなんとか考えていただきたいです。