2016.2.19 【たった二人の一門会@繁昌亭】

【たった二人の一門会】

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風邪気味で自重していたため6日ぶりの落語会は福笑一門会。もちろん弟子はたまさん一人だ。いつも、前座もなしで二人で四席たっぷりと。一席目からトリまで全部濃厚な落語が続きとても楽しみな会だ。特に今回はたまさんの二席が「地獄八景」と「らくだ」という、おそらく同じ噺家が同じ会ですることは二度とないと思えるとんでもないネタ出し。そのせいか、普段この師弟の会ではあまりみかけない落語ファンも参加していて、満員の客席は開演前からなかなかの熱気だった。

たま / 地獄八景亡者戯
福笑 / インテリ強盗
仲入り
たま / らくだ
福笑 / ちしゃ医者

でことで、なんと開口一番から地獄八景だ。たまさんに言わせると、今日の二席はどちらも昔は大層なネタで、米朝師匠か六代目師匠でしか聴けなかったけど、今は全然そんなことないと。
たまさんにかかkるとそうなるんだろうけど、一般的にはまだまだ結構大層なネタだと思うけど。
で、たまさんの地獄八景はもちろんコンパクトで何度か聴いているのだけど、今日は導入部が大リニューアルというか、去年後半から今年亡くなった人たちが続々登場していた。当然一番の呼び物は「ついに上方落語四天王の会開催決定!」。春団治さんの登場の仕方がなんかすごくよかった。もちろん物真似つきで大受けだった。そこからオリジナルな部分と、たまさん工夫の部分とが入れ替わり出てくるのだけど、どうしてもたまさん工夫の部分が圧倒的に受けるので、この噺オリジナルな、十二人の団十郎とかはっぱ六十四とかの件があまり受けない。たまさん米朝全集の台本通りで、って言ってたけど。もっと変えれば更に更に受けると思う。
川を渡る手前までだったけど、下げは閻魔にかけてきれいに落ちていた。

続いて福笑さん、上がって珍しく前の噺に触れ「なんか米朝一門に喧嘩売ってるみたいやな」と言いながら、結構好意的な感じ。最近こんな福笑さんの反応も時々みれるようになっているのがまた楽しい。
できれば、この会でふたりでトーク、芸論してほしいところだ。
ネタは「インテリ強盗」。聴くの三度目で面白いんだけど、福笑さんの新作の中では圧倒的な感がまだあまりないように思う。福笑さんなら、他の人にはない盗人噺が絶対できると思っているのだけど。

中入り後、たまさん二席目は「舟行」で登場し、座っていきなり六代目のモノマネ。しばらく松鶴名跡の話で盛り上がる。果たして八代目はどうなるのか。
「らくだ」は去年の微笑でたまさんで聴いた。あの時はたった一つの工夫にどっかんとやられたのを覚えている。
さすがたまさん、と思ったものだけど、今日は同じことあってもやられはしない。二度目だから。
ならどんな感じになるのか。
なんか、冒頭からあまりリズムがいいように聴こえない。「えー」とか「あー」が少し耳につく。会話のバランスも屑屋が多い感じだ。実はふぐの出どころは、という前回一発でひっくり返された件も二度目はそこまで効果的ではない。下げ前の場面もなんか納得しにくい。
ネガティブなこと並べたけど、前回は一発の見事さに他の部分に目が行きにくかったのかな。
でももちろん、すごく楽しいには違いないんだけど。

最後は福笑さん「ちしゃ医者」。この噺実は去年からたまさんが盛んに掛けていたネタで、たまファンの人たちは汚い噺だと思いながら度々聴かされている。これだけ聴くと汚さに慣れてしまうのではと思うほどだ。で、たまさんがこれは師匠からのネタです。と言ってたのだけど、福笑さんは最近この噺あまり掛けていないようでみなさんほとんど聴いていない。だからたまファンの人たちの中には、地獄やらくだよりも、福笑さんの「ちしゃ医者」が今日最大の注目だった人結構いたはず。
そして、結論を言うと、これがとんでもなかった。この噺、半ば過ぎまでは医者がらみのいたって普通の滑稽噺なんだけど、そこから急変して汚い噺になる。僕はエロ系の下ネタは全然OKなんだけど、汚い下ネタは正直好きじゃない。でも今日はもう徹底的に行けばすがすがしくなるというか、押しまくる福笑さんに圧倒された。
「下ネタ上等おおいに結構、〇〇こは平等」福笑さんの名言だ。
で、これだけ汚い落語でこれだけ感心させられたのも初めてだ。
唯一の弟子のたまさんを好きなように暴れさせて、自分はさらにその上を行くという、なんかとんでもない師匠だ。

ということで、僕が上方最強の師弟だと思っている「たった二人の一門会」は終わった。しかし、福笑さん次から次へと刺激的な会をプロデュースする。大したものだ。もちろんその中には弟子のたまさんをどう使うのかということも含まれている。今年10回目のこの会、いつまでも見せていてほしい。というか自分も元気でないといけないんだな。