2016.1.19 【大阪市民寄席@繁昌亭】

大阪市民寄席】

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大阪市民寄席」は協会主催で繁昌亭で定期的に開催されている寄席形式の落語会。きっちりとはきまってないようで、年に4-5回ぐらい開催されているのだろうか。いつもテーマが設定されていて、今回は「信じるものは救われる」。ほぼ坊主、神社関連のネタが並んでいる。福笑たま師弟の登場率が高いため、これまでも結構行っている。大阪市民および在勤在学の場合は500円バックの特典がある。今回から入場料が2000円→2500円に上がり、僕の場合更に大阪市在勤でなくなったため実質1000円アップはちょっと痛かった。
そして、今日のメンバーは、ご存知福笑-たまと松枝-飛梅のダブル師弟に、福車さんが加わるという何やら風雲急な顔ぶれだ。折からの大寒波と値上げの影響もあるのか、70-80人ぐらいと、客席は少し寂しいけど、開演前から結構熱気は感じた。

たま / 初天神
松枝 / 餅屋問答
仲入り
福車 / 淀川
福笑 / 蓮の池クリニック

飛梅さん2年半ぶりだ。以前何度かきいていた時は、あまり若々しさが感じられないのが気になっていたけど、今日はそうでもらなかった。相変わらず落ち着いているんだけどキャリアなりにみえてきた。
八五郎坊主」は上方では珍しく八五郎が登場して、みんなで坊主をおちょくりまくるような噺だけど、いろいろ出てくるぼけっぷりもなかなかよかった。

続いてたまさん。いきなり「嬶、羽織出してくれ」から止めて「やっぱりまくら言いましょか。すると下げまでできない」。結局まくらの春団治さんの話は月刊たまでということになった。で、噺再開してすぐにまた止めて「初天神する時どこで羽織脱いだらいいのか分からない」。その疑問についてひとくさり。結局これが短いまくらになった。みなさん冒頭の羽織の間は脱いでないと思うのだけど。
おそらく今年1月25日の一番直近で聴く初天神だろう。正月は明けたけれどもまだ1月の華やぎは少し残ってるこの時期にぴったりだ。向いのおっさんへの寅ちゃんの強欲さがおかしい。たまさんのは終始寅ちゃんのしっかりぶりが引き立って下げのたこまで。

中トリは松枝さん、たまさんの高校の先輩だな。しかし今日の顔ぶれは師弟二組に加えてその師匠同士が兄弟弟子、かつその中でクロスして高校の先輩後輩もいるというなんとも濃い人間関係の落語会だ。
春団治さんのことを、たとえ高座に上がれなくてももう少しいてほしかったと。で、ここから、たまさんがまくらさらっと終わらせたからでもないだろうけど、なかなかの毒まくらが炸裂した。春団治一門のこと、米朝家のこと、兄弟子松喬さんのこと。中身は書けないけどね。
ネタは「餅屋問答」。今日のテーマからしてこの噺になってるけど、本来は八五郎坊主とこの噺が並ぶことはありえない、と。確かに、どちらも寺で坊主がうだうだする噺だ。松枝さんの落語は口跡が明瞭ですごく分かりやすい。かつ、まくらにもある特有のシニカルさが全編に散りばめられていてなかなかのうだうだ振りだった。後、せっかくならトリの兄弟子福笑さんのことも少し触れてほしかったな。

仲入り後は福車さん、濃い人間関係の真っ只中にいる今日の顔ぶれとは違って、春団治一門で孫弟子になる。この人はなんて言うか、上方芸人らしい独特の空気を持ってる人で、しつこさくどさが味わい深い。
で、ネタは「淀川」。どんな噺か全然知らなかった。タイトルだけで新作と思っていたけど古典なんだな。僕もまだまだ知らない落語のこと多い。
福車さんが、この噺グロテスクだという人いると言ってたけど、それも当時の大衆芸能の風俗だから。そんなこと言ってたら文楽なんて今上演できないよ。
噺は「淀川」という名前の料理屋が舞台、鯉の活け造りでさばきかけた時にあるぼんさんが通りかかり殺生はやめろとその鯉を買って川に流す。数日後今度は鰻を同様にしているとまた通りかかり、味をしめた店主は高い値で売りつけ、ぼんさんがまた川に流す。で、今度は海がしけで魚がない時に、ぼんさん久しぶりに通りかかって、店主のとった行動、その後のストーリーがとんでもなくて、グロテスクというよりシュールだ。僕は落語にこういう噺全然ありだと思う。筋は読めたけどね。

最後は福笑さん、先日大きくなった黒子を手術でとった時のこと、医者や看護師の上手下手で笑わせ、「蓮の池クリニック」。これは数日前に染八さんが掛けた時も言ったけど、去年の繁昌亭台本コンテストの入賞作で、発表会で福笑さんが掛けた作品だ。
とあるお寺で住職が敷地内に病院を建て息子を院長にする。で、病院から寺への一環作業で患者が流れて儲かると。次は敷地内に同様にメモリアルホールをつくり、最終的にはファイヤーセンターもつくる構想があると。そんな中で圧倒的なドタバタが繰り返される。いつも福笑さんの新作聴いてる人なら分かると思うけど、このストーリーだけ聴くともう福笑さん作の新作としか思えない。噺を聴いても当然爆笑なんだけど、他の作者の影を全く感じさせない。「落語は演者のもの」と言われる所以だ。
福笑さん、最初にコンテストの入賞作にかなり手を入れましたけど、まだまだこの噺は変わります、と。この欲があってこそ数々の爆笑噺が生れるんだな。

繁昌亭夜席にしては客席が少し寂しかったけど、いつもいい落語会だ。テーマが決まってるということで分かりやすくて、たまさん言うところの、初心者にも通の人にも楽しい会、になってると思う。もっと動員策を考えなあかんのではと強く感じた。