2016.1.14 【たまの微笑落語会@高津の富亭】

【たまの微笑落語会】

イメージ 1

たまさんが、2か月に一度やっている古典ネタおろしの会。一般的には新作のイメージの強いたまさんだけど、実は古典もかなり掛けている。で、結構アレンジされるのでコアなたまファンの間ではこの会を楽しみにしてる人も多い。
開場してプログラムをみると、この2月からの主催落語会のリニューアルの図説があって、これはたまさんが数か月前から言ってた事なんだけど、どうもどんな人がどの会に行くかという流れが最近変わってきて、結果的にはリニューアルの必要がなくなった。でも会場とか押さえてるので2-6月までは限定のリニューアルにするとのこと。7月以降はこの1月までの体制に戻るらしい。
たまさんらしいと言えばらしいけれど、柔軟性があるのか拙速なのかよく分からない。そんなことで、最近たまさんが「初心者の人は来なくていいです」と言ってる微笑落語会開演だ。

染八 / 蓮の池クリニック
たま / 正月丁稚
呂好 / たいこ腹
たま / 植木屋娘
中入り
たま / くやみ
(三味線) / はやしや香穂

染八さん、「蓮の池クリニック」は去年繁昌亭での落語台本コンテストの入賞作で、その発表会で福笑さんが掛けた噺だ。その時僕も現場にいたんだけど、もう福笑さん作としか思えないような爆笑編に仕上がっていた。それを今回福笑さんから稽古してもらったと。
染八さんはいつも前座噺をきっちり演じてる印象があって今回も同様にきちんとしてる。だけど、何せ相手が福笑さんなのでやっぱり爆笑エッセンスが全然ちがう。でも染八さんがこの噺を選んで福笑さんに教えてもらったというセンスはなかなかのものだと思うので、この先どんなに変わってくるのか楽しみだ。

たまさん、春団治さんの話から。若い頃に「お玉牛」を稽古してもらった。笑福亭の稽古はとにかく大きな声を出せと言われていたので、春団治さんの前でも同じようにしてたら「君の落語の登場人物は川向うにいるのか」と言われた。後、楽屋で怒られたこととか、派手な着物に「君は浪曲師か」とか。小さな思い出はいっぱいあると。
だけど、いろんな噺家さんをみたりきいたりしてると、春団治さんて一門以外にも随分いろんな人に稽古してるんだな。みなさんその三代目の思い出を胸にこれからもその噺掛けていく。財産だな。
そしてネタは「正月丁稚」。この噺もできる期間が短い季節ネタだけど、商家の元旦の風景を描いてる場面がいろいろ貴重だ。で、定吉上方落語界のスターの一人だけど、たまさんのは適度にひねて適度に可愛いのがいい。

続いて呂好さん、最近女風呂が好き、て自己紹介しないな。まくらは兄弟子呂竹さんの頑固振りと師匠呂鶴さんとのすれ違いなやりとりから「たいこ腹」。若旦那と繁八に置き換えてすすめるが、テンポが緩い。でもこれは快感になるようないい緩さだ。針をうつ場面でもなんやかや言うてなかなか打たない。あまりこういう「たいこ腹」聴かないのでかなり新鮮だった

たまさん二席目とトリネタ入れ替えを言ってたけど、諸般の事情によりプログラム通りで結局「植木屋娘」。大学落研時代に枝雀さんのをそのままやっていて当時は面白い噺と思っていたけど、プロの間では案外かからない。その理由をたまさんなりに分析説明して、枝雀さんとは全然違う植木屋娘に。僕はやっぱりこの会のこんな流れが好きなんだ。のぞきのシーンで大活躍の幸右衛門、絶叫するお咲さん、下げもすとんと落ちた。たまさんにしかできないのかもしれないけど、大筋をかえずにここまで噺の印象を変えてしまうのはさすがだ。

中入り後は「くやみ」。こちらは演者も多くて爆笑噺になっているけど、たまさんはそれで済まさない。この噺は実は別の噺の一部であると、とある書籍に明記されているけど、別の話の内容は演題から想像するしかない。だから創ってみたと。胡椒がからむ。そんな噺「くしゃみ講釈」以外にもあったんだ。元ネタくやみの部分は、のろけを抑えてたけどやっぱりのろけになってしまうような展開で楽しかった。それで、今日の「くやみ」の全体像が今後どんな風になっていくのだろうか。これはプロセスをみたいなと思う。

笑い上戸のきーさんがつぼだった。
こうして、たまさんの会を欠席しにくくなっていくんだ。これも戦略なのかな。

今日も楽しかったんだけど、プログラムで2月以降に開催予定の実験落語「ナイトヘッド」は7月以降も続けてほしいな。やっぱりたまさんの落語は新作に古典的手法を持ち込んで、古典を新作的に解体再編して創っていってるように思う。だったら、古典と新作別々に聴くより一気に聴いた方が更に楽しい気がする。

どちらにしても今年もたまさんの落語はオリジナリティにあふれて楽しそうだ。