2016.1.9 【動楽亭昼席】

 【1/9 動楽亭昼席】

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りょうばさん、初高座3日目でようやく来れた。僕はこのひとのアマチュア時代の落語は大阪で二席聴いただけだ。だけど演者としてすごく光るものを感じた。もちろんその中には血筋の背景もある。でも本人はプロのミュージシャンなわけで、そして年令のこともあるし、残念ながらプロの噺家というのはないと思っていた。
だから去年の夏にざこばさんに弟子入り、の報を聞いた時は驚いた。でも、2~3年で年季明けて40代半ば。落語家ならまだ若手と言われる年齢だ。決して遅くない。その時から初高座を待っていた。
そして1/7からの4日連続出番が12月に発表された。昨日一昨日は来れなかったけど、ネタは「発端」と「煮売屋」。さて今日は何を聴かせてくれるのだろうか。

りょうば / 東の旅発端
ちょうば / 看板の一
宗助 / 足上がり
わかば / 掛け取り
中入り
たまご / (三味線放談)
塩鯛 / 小間物屋政談

りょうばさん、まず高座に上がって客席を見渡して、とても明るいのがいい。聴き手の心にすっと入ってくる。
始まった。たたき~今日も発端、いいリズムだな。この噺確かに笑うところほとんどないけど、僕は好きだな。立て弁好きで、リズム落語好きなもので。ドラマーだから当たり前か。噺進んで奈良に入って、このあたり多少のくすぐりもあって、それがきちんと受けてる。ここは落語するのが精一杯ではなかなか受けない。で、スムースに最後までいった。僕の好きな音楽的な落語のゾーンだ。
りょうばさん、今はこの動楽亭の楽屋番をやっていて、他の人の会の時いきなりお茶子での登場に客席がわいたりしたこともあった。やっぱり関西の落語ファンには、今も枝雀さんが心の中にいる人たくさんいて、そんな人たちはりょうばさんに期待する。でもそれは、枝雀さんになってということじゃなくて、血をひいてる人がこの先どんな噺家になっていくのか、ということが楽しみなんだ。まだ明日もう一日あるし、2月の昼席の出番も決まっている。そして、2月以降は他の人の会の開口一番とかにもどんどん出ていくようで、楽しみは広がっていく。

続いて、兄弟子になるちょうばさん、あがって「今日のメインイベントは終わりました。でも、名前似すぎてませんか」。りょうばとちょうばでこの先きっといろんなところで間違われることになると。うーん、絶対そうなると思う。
それはそれとして、今日のネタは「看板の一」。おやっさんの少し悪そうな感じがよく出てよかった。やっぱり、りょうばさんに刺激うけてるのかもしれない。

次は宗助さん。特にりょうばさんのことには触れずに、「足上がり」。周りの状況に関係なくきっちり落語をするのが宗助さん。そんなに頻繁にかかりはしないけど、このネタは芝居噺でもあり、商家の噺でもあり、下げがきれいに落ちる噺でもあり、すごく好きな噺だ。こういう噺を確実に楽しませてくれる宗助さんも当然いい噺家ということになる。

中トリわかばさん、2か月ぐらい前にこの動楽亭昼席でみた時余りの顔の黒さに驚いたのだけど、まだ相当黒い。ウォーキングのせいてことだけど、噺家さんが真冬にまっ黒な顔で高座にあがることに大きな違和感がある。例えば、顔に眼帯や包帯をして上がるのと大きく変わらないのでは。怪我や病気のためならやむを得ない部分もあるのだけど、黒くなること気にしないでウォーキングしてるとしたら、それは少しまずいのではと、僕は思う。
噺は「掛け取り」。悪くなかったけど、正月に聴くとある意味最大の違和感があるネタかもしれない。

中入り後は、たまごさん。喜味こいしの娘さんで、父親の晩年は二人で漫才とかもしてたらしい。確か一年前にここで聴いた時、しゃべりがあまりにも英華さんに似ていて、「こんなのあり?」と思うほどだったけど、今日はそれはあまり感じなかった。そして踊りを披露、これはよかった。後は、三味線をもう少し弾いてほしいところだけどね。

トリは塩鯛さん、「世の中には顔の似ている人がいるもので」、と。若い頃もっと太ってて、よく言われたのがドカベン香川とちゃっきり娘だそうだ。ドカベン関連のエピソードで爆笑だったが、しばらく似てる顔の話で盛り上がる。何をしはるのかなと思っていたら「小間物屋政談」、江戸ネタだ。本来、江戸の小間物屋が上方に商売に行き、逆に上方のものを仕入れて帰ってくる途中で騒動が起きてと言う噺を、まったく逆の設定にしている。
で、塩鯛さん最初に、年末からひいてる風邪が直りにくくて声の調子が悪いと、断って始まった。たしかに少しは悪いように感じるけど、そんなに大層なものでもない。こういう上方ではあまり聴けないストーリーものの噺を聴き手を引き付けるような持っていき方をする。ぐっと引き付けておいて、突然「小間物屋政談半ばでございます。と、言ったらみなさん怒るでしょ」 そら怒るわ。そこから後半を始める。うまい演出だ。声の調子が普通の時はこういうの入れるのかどうか知らないけど、まさに緊張の緩和だ。
で、後半はドロドロのとんでもない展開になって、一体どうするねん、というところで名奉行佐々木信濃守がゲスト出演。見事な裁きで一件落着となる。
圧巻の高座だった。

ていうことで、りょうばさんで始まった今日の寄席は、塩鯛さんが見事なトリで締めた。りょうばさんにもいつかは今日の塩鯛さんのような落語をやってほしい。2月以降もりょうばさん聴きにいってみよう。