2016.1.7 【繁昌亭大賞各賞受賞者の会 @繁昌亭】

-【繁昌亭大賞各賞受賞者の会】

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長い名前の覚えにくい会だけど、動楽亭でやってる「できちゃったらくごの会」という新作ネタおろしの会と同じメンバーで、かつては「育っちゃったらくごの会」というネーミングだったようだ。でも今の名前にしたら入場者が30~40人ぐらい増えたらしい。たまさんに言わせるとその30~40の人はタイトルにだまされてるのではと。個性派が集まった落語会で、僕はできちゃったの方が好きだけど、この会もなかなか楽しい。

大喜利 / (司会)三金 三風・たま・南湖・あやめ・遊方
三風 / 世代哀歌
南湖 / これが真田丸
三金 / 理由なき理容所
中入り
あやめ / ルンルン大奥絵巻Ⅱ
遊方 / 宿替え

正月なので大喜利から。お題は「数え唄」。お約束のようにみなさんボケ倒すのでなかなか進まない。三金さん、兄弟子の三風さん、先輩のあやめさんにも容赦なくハリセンを見舞う。大喜利はやはり舞台が大きい方が隣への流れでつくりやすい。

最初は三風さん、世代格差の話で、まあ若い人の話が分かりにくくなったおじさんの悲哀をおもしろおかしく、という噺なんだけど、どうもこの人の新作ひっかかることがよくある。以前聴いた定年した人の話もそうだったけど、多分、笑われてる人を更にみんなで笑う、みたいな構図になっているからかなと。人情噺ぽいけど、そうでもないんだな。古典落語の登場人物を笑うのとは根本的に違う気がする。

続いてたまさん、最近おなじみのバーテンダー。月刊でのネタおろしを入れると聴くのが5回目だ。最初から面白い要素は十分にあったけど、たまさんの新作ネタおろしはちょっと荒っぽい。でもこの噺については回を重ねるごとにきっちりした形になってきて、今日はもうすごくよくできた噺になってた。
全体の構成といいギャグの盛り込み方といい、サイズといい、こうやって変わっていくのをずっとみてると面白いな。ひとつだけ汚い部分はまあいいかな。これでもうレギュラーネタだと思うけど。
で、新作創るひとでも、こういうプロセスを高座でみせる人とそれほどみせない人がいる。どちらがどうってことはないんだけど。

次は南湖さん、映画スターだからね。噂の真田丸だ。どうも大阪における真田幸村の扱いは、講談に向いてるというか、どこまで本当か分からないところがいい。今日も南湖さん、真田の抜け穴のことをいろいろ言ってて、聴いてるととても面白いんだけど、本当にあったかどうかは極めて怪しい。で、幸村の話が「難波戦記」になって、それを読んだ南湖さんが映画になって、結局見逃したんだけど、今日の下げは「この続きはDVDで。」もうすぐ出るらしい。しかし早いな。

中トリは三金さん。「理由なき理容所」は、一言で言うとハゲネタだ。これも肉体的な部分を扱ったネタだけどかなり受けてた。三金さんの新作は、奥野君シリーズとかでも、着眼点のいい笑いが必ず盛り込まれているのがいい。でも、今日ハゲの人に対するエクスキューズを言ってたけど、それはいらないと思う。

中入り後はあやめさん、「ルンルン大奥絵巻Ⅱ」。Ⅱというだけあって前作の続編かなと思ってたけど、アレンジとかじゃなくて完全に続編だった。前編は大奥で対立する二派があって、いろんな駆け引きの結果、河内の暴走馬賊あがりのおりゅうに世継ぎが生れるという噺。
今回はその世継ぎ虎千代が対立する一派のため非業の死を遂げる。しかし、おりゅうがふたたび懐妊し、対立一派にも同じように懐妊が確認される。でどちらも男子が生れて、将軍が死んで世継ぎはどちらにということだけど、二人の世継ぎにはそれぞれとんでもない秘密があって、そこから話は意外な展開に。
今、これ書いてて思ったけど、これは文楽みたいだな。ドロドロ満載の浄瑠璃噺だ。だけど結末がさわやかでいい。あやめさんの落語を十分楽しめる新作だ。

最後は遊方さん、今日唯一の古典「宿替え」。どうしても枝雀さんのが頭に浮かぶけど、かなり違った。のろけたおして,なかなか釘にいかない。このあたりのねばっこさがいい。遊方さんの古典はあまり聴く機会が多くないけど、かつて聴いた「うなぎや」や「寄合酒」同様に、遊方落語の古典になっていて爆発的に面白い。できればもう少し古典を掛ける比率を上げていただければと思う。そして、嫁が登場するというあまりないバージョンでさげた。

この会は、できちゃった、も含めて全部面白いわけじゃないけど、必ず光る高座が何席かあって、損はさせない。
でもやっぱり僕は、できちゃった、の緊張感の方が好きだな。