2016.1.5 【年頭緊急落語会@繁昌亭】

【年頭緊急落語会】

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今年初めての繁昌亭はおなじみ師弟の出演する会で、米團治さんがゲスト的なポジションだ。二枚看板が三枚になると何か普通には終わらない感じが一層強くなる。ネーミングの「年頭緊急落語会」は先月の「年末緊急演芸会」と対になっていて、米團治さんにも期待がかかる。画面が暗くて分かりにくいけど、この時期の繁昌亭は正月の衣装をまとって華やぐ。やっぱり寄席には正月が似合う。今年も一年ここで思い切り笑わしてもらおうと期待がふくらんだ。

染八 / 時うどん
福笑 / 去年もいろいろ
米團治 / 七段目
中入り
たま / 桑名船
福笑 / 葬儀屋さん

染八さん、いつも通りきっちりした元気な「時うどん」だけど、今ひとつ受けがよくない。まくらの本名の件とかは良かったんだけどね。この会だったらもう少し崩してるような感じがいいのかもしれない。

福笑さん、上がっていきなり染八さんをいらう。もっと受けなあかん、てことだったけど、福笑さんが高座で開口一番の人に触れるのなんて記憶にない。思えばこの時すでに最後の驚きの予兆があったのか。
で、この日の繁昌亭を押えたのは初詣帰りの落語にそんなに詳しくない人がどっと押し寄せてほっといても満員になると踏んでのことだったらしい。確かに満員にはなったけど、客席を見渡した福笑さん思惑が外れて「落語好きな人ばっかりですな」。ネタ出しのこの会、落語に詳しくない客層を想定して米團治さんも染八さんもネタを決めたらしい。たまさんの思いはまた後で。
一席目の「去年はいろいろ」は、ここ数年福笑さんが年末年始用に一年間の出来事を振り返るネタでこの年末年始は僕は聴いてないんだけど、他のネタのまくらでも部分的に結構聞いていて、これはやっぱりリピートには少し耐えにくいか。

中トリは米團治さん、米朝さんの話、大往生だったと。何か少し吹っ切れた感じがした。そこから噺家二世の話になって、落語ではあほぼんて言われるけど、歌舞伎やったら若旦那や、と。海老蔵愛之助、壱太郎と名前をあげて歌舞伎を持ち上げ、歌舞伎には花道があって目の前で役者を見ることができる。例えばと言って下手通路に飛び降り一番後ろまで行って、通路を花道に見立てて見栄を切って駆けてきた。それでひょいと舞台に飛んで戻った。なんというサービス精神だ。
そこから「七段目」。最近あまり聴く機会がないんだけど、この人の「七段目」は芝居ぶりが満載でとても楽しい。中でもお七の火の見櫓上るところの人形ぶりは爆笑だ。やっぱりこの人は華があるし、男前で声もいいし、何より米朝二世で、他の人がもっていないことをいくつも持ってる。今日も大旦那を演じる時に米朝さんがすっと影をさした気がした。これからの米團治さん聴くのも楽しみだ。
ということで、ここまでは今日のハイライトは米團治さんで決まりだと思っていた。

中入り後はたまさん、米團治さんが福笑さんを米朝一門のざこばさんに見立てて、とんでもない人同志みたいなことを言ってたのを数々の有名なエピソードで米團治さんこそとんでもないと。たまさんなら米團治さんいてもこれくらいは言うだろうということで、なんてゆうか安心した。
そこからネタ出しについて、福笑さんがほっといても満員になると言ってたのに懐疑的だったと。それでべたな「憧れの人間国宝」とかじゃなくて「桑名船」にしたと。客層はたまさんの読みが的中した。だいたい、この顔ぶれでいつも福笑さんの会に行ってる僕たちがすぐにチケット押えるに決まってる。初詣帰りの人がふらっと入るのはもうチケットがあまり残っていなかった。
「桑名船」は大阪で4人しかやらないそうだけど、最近たまさんはよく掛けてる。折句遊びで名古屋弁の男が登場するのがポイントで、その男が原因で乗り合わせた侍とトラブルになってという噺だ。たまさんらしく勢いでぐんぐん押して爆笑が続く。とてもいいと思った。でさげは少し変わってた。

最後は福笑さん、上がってまずたまさんを褒めた「よお受けてた」と。これに驚く。福笑さんの会にはまずほとんどたまさんも出ていて、相当数同じ舞台に立っているのだけど、福笑さんがたまさんのこと高座でに触れたのを聴いた記憶がほとんどない。さらに、さげについて公開チェックを入れ、あの形で下げるのならどうして折句をつくって入れない、と。そしてなんと、今からつくってもう一回舞台に出てこいと言っておいた、と。これはびっくりだ。
そこから福笑さん、最近死んだ人の話題をいろいろと。ネタが「葬儀屋さん」だから。
そして、もうネタに入りそうなその時、たまさんが飛び込んできた。
これはね、福笑たま師弟の舞台でのツーショットは多分初めてなのでは。僕がこの二人の会に通いだしてからはまずなかった。少しかしこまって折句を披露するたまさん。落語会の客席を取り込んたものだ。そして満足そうにうなづく福笑さん。いやいい画だな。いい師弟だな。正月早々こんな景色をみせてもらって満足すぎる。
ネタはもちろん鉄板爆笑編なんだけど、二人並んだ舞台姿には少しかすんでしまったかな。

ということで今年初めての繁昌亭は素晴らしい充実ぶりだった。この先福笑さんの会でこんなことまたあるのか、ないのか。どちらにしてもt楽しみがまたひとつ増えたことは確かだ。