2016.1.3 【波乱万丈新春寄席@西宮芸文中ホール】

【波乱万丈新春寄席】

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西宮芸文中ホールのキャパは800人、大阪で言えば、サンケイブリーゼ、御堂会館、シアタードラマシティなどとほぼ同じ規模だ。ホール落語の嫌いな僕だけど、この中で落語会の会場として一番ましだと思えるのがここだ。客席にかなり角度がある。縦横比が適正。設備がきれい。などだけど、ここにしかない利点として不要チラシの回収ボックスを常設していることがある。特に難しいことでもないので、他でも実行してほしい。
さてここで正月から「福笑たま親子会」だ。福笑さんは西宮が地元だし、ここにもあがってるけど、たまさんは多分初めてだと思う。そこでかけるのが「ペッパー・ラッパー」、これは注目だ。

喬介 / 金明竹
たま / 壺算
福笑 / 宿屋ばばぁ
中入り
たま / ペッパーラッパー
福笑 / 桃太郎

喬介さん、自己紹介でいきなり噛む。それでもめげずに「落語を楽しく聴くあいうえお」そして「落語楽しくするかきくけこ」。「か」→噛まない。これで爆笑。ネタは「金明竹」。これも好きな噺だ。立て弁もスムースにクリアした。でもこの立て弁でなぜ拍手がくるのか。誰かが拍手したら何の考えもなく拍手するのかな。

続いて、たまさん一席目、最近あまりみなかった例の派手な着物で「地味かしら?」。そこから阪急電車にちょっと愛想してショート落語。ベスト版なのでとても受ける。僕としてはどれがどれぐらい受けるのかが面白かった。一番は「シンクロナイズド・ドリアン」だったのでは。
ネタは「壺算」。以前、高津落語研究会で雀五郎さんが「たま兄さん詐欺師になればいいのに」て、言ってたけど、正にたまさんにぴったりの噺で、聴き手の頭を混乱させたら勝ちだ。同じことを説明するのに少しずつ角度を変えて無理やり納得させるのが詐欺師の手口。それにしてもこの噺は名作だ。

福笑さん、まくらでかなり毒をはいて「宿屋ばばぁ」。何度も聴いてるけど、今日はこの噺福笑さんの最近の新作の中で随一なのではと思った。広いホールでも全く笑いのパワーが落ちないし、細かいギャグがかなりの密度で繰り返されて聴き手に息をつかせない。かなり際どい表現もあるけど、この人なら許容範囲になるのだろう。
ところで、僕は今日6列目にいたのだけど、少し前に福笑さんの高座になるとオペラグラスでずっとみてる人が何人かいた。何を見てるんだろう。というか、僕らとは異質なファンなんだろうな。ファンの層も厚い。

中入り後、いよいよ「ペッパーラッパー」。調べたらこの噺これまで4回聴いていて、一番最近が一年半前御堂会館の福笑独演会で、後の3回は繁昌亭。4回とも何の疑問もなく大爆笑で、この噺のパワーのすごさに圧倒された。今日はホールの規模だけなら御堂会館と変わらないけど、初めて不満が残った。
この噺は例の曲のところが何といっても肝になるから、それまではよく受けていても普通になる。で、今日は最初あの曲が流れた時結構なボリュームで自然と手拍子が起きていい感じだったのに、そのボリュームがたまさんのボーカルが入ったとたんにレベルが下がってしまって、それで手拍子もとまりホール全体のテンションも同様に下がってしまった。これはやっぱりミスだと思う。フリップが大きくてめくるのが遅れたり、マイクに当たったりとかあったけど、これはむしろ想定内のことだと思う。その前の曲のダンスまですごくいいリズムだったので残念だ。

最後は福笑さん「桃太郎」。福笑さんでは8回目、数年前聴くたびに変わっていってたころリアルタイムで聴いていたけど、もうほぼ固まって大きくは変化しないのだろう。「桃太郎」と言っても鬼が島に鬼退治に行く場面が大スペクタクルで展開されるという、下げ以外は原型をとどめない福笑ワールドだ。噺家は60代が本当の勝負、と言うけどこの人の落語はどうみても体力がいる。だけど今のところ彦八のヒロポンズ・ハイとかも含めて衰えを感じさせないのでまだま聴かせてほしい。僕が「俺より先に死ぬなよ」と思っている年上の噺家の一人なんだから。

終わってからのツイで来年の開催も決まったらしい。やっぱり3日なのだろうか。3日は文楽初日とかぶるから本当は困るんだけどな。まあ正月からうれしい悩みではあるけど。これが終わった後、7人で百年長屋へ大移動。ブリーゼ組や繁昌亭組もいたけど、西宮組が数では圧倒した。「福笑・たま」と「南天紅雀」。相性いいのかな。
4人並ぶような会あれば楽しいだろうな。