2015.12.26 【三金吉坊二人会@繁昌亭】

【三金吉坊二人会】 

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上方落語界の中で、何のつながりもないように見える二人の会、元々そんな興味で行き出したのだけど、やっぱり化学反応を起こさない。まったく起こさない珍しい二人会だ。でもそれが逆に新鮮なのか通いだした。
今日は「たちきり」と「ゴスペル落語」どちらも楽しみだった。

三金・吉坊 / オープニングトーク
眞 / みかん屋
吉坊 / 河豚鍋~踊り・五段返し
三金 / ゴスペル落語・赤鼻のトナカイ
中入り
三金 / 蒟蒻問答
吉坊 / たちきり

オープニングトークで今回も何のつながりもない二人の話に。で、文枝さんがそれをどういらったかと。4回目だそうだけど僕が来たのは3回目。おそらくこれからも来るだろう。毎回同じだけど、話題にしながら二人のつながりは明かされない。多分それは特になくてなんとなく始まったのでは。
で、三金さんから吉坊への質問、「年賀状やけど、米朝一門としてはどこまでが喪中やねん?」
吉坊の答えは、「人それぞれ決めてます。書いてる人もいる」
三金さん、「米朝師匠が亡くなったんやから上方落語界あげて喪中でもいいぐらいや」
そんな感じでゆるりと始まった。

最初は眞さん、いつものように男着物で上がって、「上方落語界の小林亜星です」新しキャッチやけど確かに似てる。そこから「一応女の子です」。でも、段々男前になってきてるように思う。いっそ女やて言わんかったらどんな反応になるのかな。
ネタは「みかん屋」、眞さんでは初めて。落語で物売りにいく男は、そんなあほじゃないけどどっか抜けてなあかんしバランスが難しいのでは、と思うけどその辺りがいい感だった。

吉坊、米朝内弟子時代の食事の話から冬の噺をと、一席目は「河豚鍋」。吉朝一門の十八番やけど、吉坊では久しぶりだ。この噺きちんとストーリーがあって、それが面白くて、おこもさんの存在もきいていて、本当によくできた噺なんだけど、吉坊は普通に盛り上げて抑えて盛り上げてストンと落とす。聴いてて本当に気持ちがいい。
同じ落語を何度聴いても面白いのは、ある意味予定調和の世界だからと思うけど、だからこういうストンとした分かり切った下げが好きだ。
その後、頭を下げても吉坊下がらない。踊り見せてくれるんだ。五段返しについて詳細な解説。でも噺家さんの踊り、寄席の踊りっていいな。僕がよく聴いてる人で高座で踊りを披露してくれるのは、吉坊と生喬さん、染雀さんとかになるのだけど、みなさん、腰の安定感がすごい。そのあたり男で着流しでするから分かりやすいのかな。

そして三金さんゴスペル落語の前に、一旦幕が引かれた。そして再び開くとそこに三金さんいなくて9人の聖歌隊が並ぶ。そして2曲歌ったあとで三金さん登場して高座に座った。
噺はそりに乗ったサンタをトナカイがいろんなところに連れていく。そして聖歌隊の歌が取り込まれていく。で、最後にサンタがもう一軒と連れていかれたところは……。
いい噺だった。聖歌隊といつもの派手な着物で高座に座る三金さんとの画が面白かった。
でも、僕よく知らないんだけど、聖歌隊の人達ってどんな人なんだろうか。芸人さんとかお囃子さんとかいるのかな。それが気になった。

中入り後、もう一席三金さん。来年2月繁昌亭のデブサミット、デブ客割引の話で爆笑。そら体重計るのに並んでる図は相当シュールやわ。それ見るだけでも行く価値ありか。毎年東京からのゲストが歌武蔵さんだ。
噺は「蒟蒻問答」、餅屋ではない。上方では普通は餅屋問答になる。噺の筋はほとんど変わらないけどどうして蒟蒻なんだろう。最後の問答の所作が三金さんの大きなお腹との対比で可笑しさアップしてたように思う。
やっぱりこの人の落語は身体も強みだ。

そして最後は吉坊「たちきり」。よかった。吉坊のは若旦那がいい。冒頭での定吉との会話で不安と安堵が入交る様。そして部屋に乗り込んで番頭に切り込み諫められて、そして懇願する。座敷から出た時の落ち着き、番頭から手紙を見せられて心が乱れる。紀の庄に行って小糸に会わしてという待ちきれない気持ち。そして死んだと聞かされて狼狽し後悔する。最後に決意、三味線が鳴って止まって、下げになる。
これら一連の動きが実にスムースに自然に演じられていて、しかも感情が聴き手にダイレクトに伝わってくる。
見事な「たちきり」だった。

この会は二人のキャラの違いがすごく楽しい方向に出ているあまりない二人会だと思う。今回繁昌亭の1Fはほぼ空席なかったし、これからも是非続けてほしい会だ。