2015.12.20 【月刊笑福亭たま・12月号@繁昌亭】

【月刊笑福亭たま・12月号】

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師走も押し迫った20日、月刊たま12月号の開催だ。今回は講談の南青さんと五代目文枝一門の文也さんと、月刊たまには少し縁遠そうな人が出演。どんな展開になるのか楽しみだ。

呂好 / 米揚げ笊
南青 / (演題分からず) 左甚五郎と俵屋宗達がからむ噺
たま / 弥次喜多地獄旅行
たま / 初天神
中入り
文也 / 出来心
たま / 新作ショート落語~新作ネタおろし「クリスマス」

呂好さん、「米揚げ笊」はくすぐりいろいろ入っていい感じだ。この噺、勢いで突っ走ってそのままいけそうなネタなので、若手の人がすると気持ちがいい。バカバカしさを吹っ飛ばしているようなところが落語らしい。

続いてこの会では珍しく講談の南青さん、甚五郎ものは浪曲、講談、落語が入り乱れていろいろあるけど、基本は結構勧善懲悪っぽい。そして甚五郎は社会不適応者みたいな扱いから実はすごいとなるのもほぼ同じだ。江戸時代でも名人の噂というのはそれなりに流布していたんだろう。だけど、キャラがかなりデフォルメされ続けてるような気がする。南青さん、今日は上がった時に少し元気がなく感じたけど。

そして、たまさん。「弥次喜多地獄旅行」は地獄八景の前半部分だ。プログラムの解説がこの噺の変遷について書いてて面白いんだけど、六道の辻では北の湖野坂昭如まで登場し、「米朝歌丸二人会」近日来演とかくすぐりをバンバン放り込んで、多分地語りの部分をカット。で、面白さの密度がすごく濃くなってる。そして閻魔大王の通行料の裁定までで切ってオリジナルな下げで落とす。これが秀逸だ。
後半を全然やってないとはいえ、このたまさんの地獄八景の解釈と再構成は相当よく出来てるのではと思う。噺が長いこと自体もギャグになってる感もあったけど、それは壊してもいいのでは。

続いて二席目、ゲストの文也さんにさらっと触れるぐらいですぐに「初天神」にはいった。2~3分して噺を止めて「まくら短かったけどよかったですか?」さすがに誰も短いとは言わず初天神は再開されたけど、突然こういうことを言いだすのもたまさんらしい。だけどまくらが短い時てのはやっぱり噺に早く入りたいんだろうか。
初天神」は普通は寅ちゃんと親父のなんやかや言いながらも楽し気な親子関係がメインで、最後の凧揚げまでそれが続くのだけど、たまさんのはちょっと違って、嫁の羽織のシーンとか向いのおっさんとか飴やみたらし団子とか一つ一つの場面の方が印象的で、親子関係はそれほど聴き手に意識させない。こういう初天神も好きだ。

中入り後いよいよ文也さん登場。五代目文枝一門のベテランだけど、普段はそれほど聴く機会がない。文也さんについても、たまさんが協会有数の毒舌家、しかもスケールの大きな毒であると。で、この毒舌家は聴き手の期待は裏切らなかった。打上げでの酒の頼み方とか、カルピスサワーで塩辛は食えんとか、とてもスケールが大きいとは思えない毒から入るのだけど、知らない間にえらい大きくなっていた。
ネタに入って、泥棒噺だ。だけどこれは何なんだ。こんな泥棒噺は知らないぞ。と思っているなかにも、しばしば出てくる「しばくぞ」とか、「実は靭公園やった」とか爆笑が続く。で、噺が進んで空き巣に入った泥棒が、「この家何もないな」と言ってると、本人が帰ってくる。えっ「花色木綿」なの? そこからは普通のストーリーに入っていって、面白かったけど、また下げが違ってた。「ほんの出来心でした。」 そう言えば、江戸落語に「出来心」てあったなと。

最後たまさん、今日は「長崎さわぎ」は3分で登場。早い!
新作ショート落語はぶっかけうどんで爆笑。他は覚えてない。
新作ネタおろしは季節柄「クリスマス」。最初に唐突に下げます。みたいなこと言ってたけど、本当にその通りだった。でもこのネタクリスマス過ぎたらもうできないし、どうなるのかな。

ネタおろしはまだまだこなれていくのだろうけど、今日は地獄八景と文也さんで十分楽しかった。そして次の1月はいよいよ月刊たま・第一楽章の最終回。どんな会になるのか、そして来年以降の大阪でのたまさんの会は具体的にどんな構成になるのか楽しみで仕方がない。