2015.12.13 【扇遊文之助二人会@トリイホール】

【扇遊文之助二人会】

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この二人会、数年ぶりの気がする。ひょっとして文之助さんの襲名後初めてなのかな。扇遊さんは以前この二人会で聴いて、東京の寄席でも聴いていいなと。僕は大阪の落語ファンなのでやっぱり上方贔屓なんだけど、東京の噺家さんにも好きな人結構いる。でもそれが全然違うタイプの人で自分でもどういうことかなと思ったりする。でも考えれば30人ぐらいすぐ名前の出てくる上方の噺家さんも見事にばらばらやもんな。で、扇遊さんについては「古典を気持ちよく聴かせてくれる。」これに尽きると思う。そしていつも聴いてる文之助さん、いい二人会はいい化学反応を起こす。相当わくわくして待った二人会が開演した。

あいさつ / 鳥居支配人
米輝 / 千早振る
扇遊 / 紙入れ
文之助 / けんげしゃ茶屋
中入り
文之助 / 尻餅
扇遊 / 三井の大黒

まず支配人のあいさつから。この近所の南小学校とモンマルトルのあるパリ18区の小学校の交流が始まったと。共通点は通ってる子供の中で外国人の多さと、古典芸能と絵画という古くから文化の開けたエリアであるところ。この人は僧侶でもあるので、ご近所話がいつもなかなか面白い。次に出る開口一番の人がプレッシャー感じる時もあるのでは。

そして今日の開口一番はまた米輝さんだ。ある落語ファンがねたのたね2でこの人の名前を検索すると30回チェックに引っかかったらしい。落語で客席を温めるだけでなく、楽屋での気働きができるんだろうな。
「千早振る」は好きな噺で、無茶系の根問物てのがいい。米輝さんビジュアルのつくりでも得してる。

扇遊さん、かつて末廣亭小沢昭一さんがゲストでトリ前にあがり、トリが志ん朝さんだった時の話面白かった。扇遊さんがトリイに初めて来たのも志ん朝さんに連れられてだったと。こういう話をさらっとされるととても弱い。高座にすでにとりこまれたようになる。で、一席目は「紙入れ」。元々どちらのネタなのか。江戸上方どちらでもよく聴
く。なにより文之助さんの得意ネタでもある。今日は前半の噺の流れがあまりすっきりしてないように感じたけど、後半はトントンと運ぶ。噺全体的には抑え目でそこが良かったけど、新吉はたよりなさが結構強かった。

文之助さん、今日は事始めだけど米朝師匠が亡くなって行くところがないのが寂しいと。12月13日に事始めするのは、今は芸界と花柳界と○○○の世界だけらしい。
ネタは「けんげしゃ茶屋」、文之助さんでは初めて。そんなに頻繁に聴ける噺ではないし、正直汚い表現もある。だけどそれを茶屋の空気にのせて粋に聴かせるのがこの噺の肝だと思う。今日は初めから最後までそんな空気が崩れずにBGMみたいにずっと流れていて、これも気持ちが良かった。

中入り後は再び文之助さん、「尻餅」は10日ほど前に文之助さんで聴いたばかりだ。毎年12月になると急にかかりだす。他の冬ネタと違って旬が短いので今が聴き時だ。今日も熱演でセリフと所作がシンクロしているかのような展開になる。そういう意味ではいろんな擬態の所作の多いこの噺は文之助さんにぴったりで、今日の会の流れ的には見事な色変わりだ。

最後は扇遊さん「三井の大黒」。これが楽しみだった。甚五郎噺は「竹の水仙」と「ねずみ」は上方でもよく聴くけどこの噺はほとんど聴かない。西から流れてきた名前も忘れたと言ってる大工がある棟梁のところにころがこんで、それが実は甚五郎で大黒を彫ったらとんでもなくてという噺だけど、甚五郎のキャラがかなり違う。なんか頼りないのに時に偉そうになる。正体隠してるのはどの噺でも一緒だけど他の噺では終始偉そうだ。この噺の筋なのか扇遊さんの演出なのか分からないけど、僕はこっちの甚五郎の方が好きだな。正体が分かった時に聴き手として感じる「ざまあみろ」感みたいなのが楽しいから。

二席ずつ四席とも良かった。二人の個性がきっちり出て、かつ、かみ合って化学反応を起こす。理想的な東西の二人会だと思う。正に「江戸の粋、上方の粋」だ。ぜひともこれからは毎年続けていってほしい。