2018.8.19 【岡町南天の会@豊中市立伝統芸能館】

 【岡町南天の会】

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南天さんの大阪での会は、このところ梅田の太融寺と岡町・伝統芸能館の基本隔月開催が定着している。そしてこの岡町の会場はキャパが約100人と、太融寺本坊に比べると小さいので、毎回完売する。前回6月は 「立ち切れ線香」 ネタ出しということもあったのか、早々に予約完売し、夜の部も追加で開催された。今回は追加公演はなかったものの、やはりかなり早い時期に完売となっていた。しかしこの会、太融寺と岡町では客層がかなり違う。もちろん、僕もそうだけど、どちらも来るよ、ていうコアな南天ファンもかなりいるのだけど、やはり岡町は郊外なので、地域寄席的な空気もあって、男女ともに平均年齢はかなり高くなる。最近南天さんは近畿一円、各地でかなり自分の会を開催しているけれども、それぞれまた、空気が違うのだろうなと思いながら開演を待った。

大智 / 煮売屋
南天 / 幽霊の辻
菊丸 / 湯屋
南天 / 千両みかん

大智さん、いつもの木こりまくらからよく受けてる。大体、木こり、というフレーズだけで客席をつかんで離さない。この人、去年ぐらいか初めて聴いた時、正直ラフなしゃべりだなと思っていたけど、短期間で随分しゃべりが面白くなってきた。そこから 「煮売屋」。聴くの三回目だけど、きちんと笑わせどころで受けていて、ハキハキ、シャキシャキした印象だ。それと身体の大きさもプラスになっているように感じた。

そして南天さん、大智さんの会場設営時の段取りは素晴らしい。さすがに現場で仕事していただけのことはあると。そして、ゲストの菊丸さんと若い頃やった同じ余興の話で爆笑。更に怖い小噺を少し手順違えてまたなごむ。そこから 「幽霊の辻」。ご存知、小佐田さんが枝雀さんに書いた噺で、南天さんでは聴くの5回目だ。この噺、確かに幽霊譚なんだけど、ばばあの妙な怪しさと、男の普通でない怖がりようがキモだと思っている。「水子池」 「獄門地蔵」 「てて追い橋」 「幽霊の辻」と続いて,、男は震え叫びまくる。客席は爆笑。そして最後に女登場して幽霊かと思ったらちゃんと足がある。男はほっとして一言。対して女の一言で下げる。この下げとても好きだな。最近は南天さんで毎年聴きたくなる噺だ。

続いてゲストの菊丸さん、ラクゴリラメンバーの花丸さんの弟弟子になる。花丸さんが近いせいか、南天さんとの共演はそれほどないように思う。そして南天さんがいじった余興の話について、それは吉本と米朝事務所の方針の違いで自分のせいではないと弁解して受ける。それから吉本で同期ぐらいの漫才師との共演ネタで爆笑。こういう話を聴くと、菊丸さん僕らからみたらきっちり落語するイメージが強いけど、吉本芸人的な側面がたくましく感じられる。で、ネタは 「湯屋番」、とても楽しそうな番台男で、分りやすい落語だ。後半少し女性が登場した時にやっぱり所作がうまいと思った。僕の中では菊丸さんは 「厩火事」 とかがとてもいいと思っている。

最後は南天さん、旬の食べ物の話からすっとネタに入る。「千両みかん」で、こちらも南天さんで聴くのは5回目。聴き終わって感じたことは、この噺南天落語にしてはきっちりとした正統な仕上がりになっているなということ。そして、よく女性の南天ファンの方々からきくけれど、下げ前に若旦那がみかんの皮をむく場面、無言で所作だけで噺が進行する時の南天さんの指のきれいさ。これは本当にそう感じる。落語の中にはしゃべりなしで無言で噺が進む場面のあるネタがあって、そこはやはり演者の見せ所だ。「そってん芝居」 「鯉盗人」 「蛸芝居」 とかがそうだけど、南天さんこの噺にはあまりギャグを盛り込まないで、きっちりみせる。だけど、噺の流れで細かく触ってる箇所がいくつかあって、僕はそれがより聴きやすい流れにつながっていると思う。やはりこれも今年指折りの夏噺。夏の終わりに聴くことができてよかった。

いつも客席満員で熱気でいっぱいのこの会、次回は10/23(火) の14:30から。初めての平日昼間開催だ。最近大阪では平日昼間の落語会も増えていて、この伝統芸能館で長く開催されている 「岡町落語ランド」 も去年実験的に平日昼開催にしたところ、客層は変わったけれど客数は変わらなかった。それで次の9月開催から正式に平日昼開催になる。やはり郊外の新しい客を呼び込むには新しいことが必要なのだろう。そして岡町に来た新しい客をどうして太融寺まで持ってくるかというところだろうか。他にも 「ハルカス寄席」 とか、最近の大阪の平日昼落語会の盛況をみると、鋭い噺家さんが目をつけるのも当然かなと思う。そんなことも含めて次回のこの会も楽しみだ。

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