2018.8.17 【雀五郎体力強化の会＠高津神社・高津の富亭】

落語
【雀五郎体力強化の会】

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今日は会場が変わってからいつも行ってる雀五郎さんの会。そして普段は３席だけど、今日は４席。とんでもなく楽しみだった。開演の４０分前ぐらいに着くと、もう開場されていていつもの方々が席についている。どなたのどんな会にも常連客というのはいるものだけど、この会は特に客席の固定傾向が強いように思う。でも大半の人は他の人の会、いろんな会に行く。そんな中で雀五郎さんの落語が好き、という共通点のある人たちだ。そしてこの高津の富亭という小屋は、高座と客席、そして客席に座っている人同志の間に何かしら一体感が強く感じられる場所だと思う。どういう理由かは説明しにくいけれど、とてもいい小屋だとこの会に通うようになってから思っている。さて一人で４席どうなるのか。楽しみで開場を待った。

華紋 / 大安売り
雀五郎 / ちしゃ医者
雀五郎 / 宿替え
雀五郎 / 阿弥陀池
雀五郎 / 抜け雀

まず華紋さんから。丁寧で分かりやすくて楽しい落語をする人気の若手だ。雀五郎さんの４席を少しいらってから、彦八まつりでかつてあった、噺家相撲の話をふって、「大安売り」。切れ味もぼけっぷりもいい。後半少しつまりかけるもすぐにトントンと。過ぎた開口一番だ。

そして雀五郎さん、前の会場でも、毎年８月だけ４席やっていたけど、今年は１席増えてるので一人で５席やろうかと思ったけど４席にしといた、と。で、一席目は 「ちしゃ医者」。雀五郎さんでは二度目。医者噺でおなじみの藪医者まくらからすっとネタに入る。この噺どうしても後半のきたない系を強調したやりかたの印象が強すぎて、それはそれでもちろん面白いんだけど、かなり違う噺に聴こえる。て言うか、あの下り以外は普通の滑稽噺なのでまずは一席目軽く受けて始まった。

一旦降りて、直ぐに再登場。二席目は 「宿替え」。雀五郎さんでは初めて。今日はこれが一番楽しみだった。
冒頭の、男が嫁にホラを吹きまくって、うんちくかます場面からいいリズムで楽しさ全開だ。そして荷造りしてる最中にいろいろトラブルでなかなか進まない。男がいらいらして嫁にああだこーだ言う場面。ここが長い。とても長尺のセリフで立て弁好きの僕としてはたまらない。とうとう自分が亡くなった後の話まで始めて、ようやく釘打ちになる。ここからの場面転換、釘を打ち込んでしまって、向いの家に行って戻ってきて、隣へ行ってわあわあ言って、座り込んで煙草吸って落ち着く。ここまでの流れも息をつかせぬスペクタクル、ぽくていていい。そして用を思い出して、下げになる。とてもいい 「宿替え」。楽しくて、楽しくて、堪能した。

また、降りて再登場。忙しい。雀五郎さん、客席に向かって  「次、何でした？」 てことで 「阿弥陀池」。これは何度も聴いてる。今日の４席の中では、唯一雀五郎さんでイメージできるネタだ。トントントンと、これもいいリズムで進む。前半の訪ねて行った家の場面から主人公の男がなんやかや言うのが楽しい。そして場面変わって、騙される男の家、リズムは変わらずずっと楽しい。で、相手の嫁を殺してしまったことに気づいて、雀五郎さん得意の困惑顔から 「うそでーす」。この噺はここが一番好きだな。でも正直 「宿替え」 と二席、暴走男物が続いたせいか、雀五郎さんのリズムに少し飽きてきたように感じた。

最後の４席目、今回は上がるのに少し時間がかかってるなと思っていたら、羽織着用で登場。「抜け雀」 だ。これも雀五郎さんでは初めて。冒頭の場面で旅館の主人に嫁が、二階の客から金をもらってこいと詰め寄る。ここで 「えーっ」 と困惑顔全開で亭主二階へ。　で、客があまりにきっぱりと 「金はない。」 この場面で主人の態度が一変するんだけど、雀五郎さんのは主人が優しいのか、それほど怒らないまま、客の口車に乗せられて、墨をすったりしてしまう。「いい匂いだな」 と。これが名人であることの布石みたいになってる。そして雀が飛び出す。この噺は物語性があって、変化に富んでいて、前二席とはかなり違う。千両の値がついた抜け雀を売れないもどかしさと売らない律義さ。主人の善良さがよく出ている。で、６０がらみの男の登場をいぶかる主人の表情もいい。雀五郎さんの落語は所作も表情も間も大きくない振り幅の中の微妙な変化で表現する。これが素晴らしい。そして下げ。これも好きな下げだな。

４席堪能して、やはりとんでもなく楽しかった。本当は年一度じゃなくて２～３回やってほしいところだけど、僕でも多分同じ人の噺を４席続けて聴いたのは初めてで、途中少し飽きたと言ったけれど、好きな演者を４席連続で聴ける楽しさは、そんなものを吹き飛ばす。何より雀五郎さんのようにネタが多くないとできないことで、貴重な落語会だった。この４月以降この会に毎月参加しているけれど、本当に楽しくて、前の会場は行けない事情があったので、会場が変わって本当によかったと思っている。次回は、９/７(金) もう直ぐじゃないか。