2017.4.29 【桂文之助独演会@朝日生命ホール】

 【桂文之助独演会】

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去年秋の独演会を対象として、文化庁芸術祭大賞を受賞した文之助さん、その時のネタは 「口入屋」 と 「立ち切れ線香」、今回はその受賞記念の会としてたちぎれ線香を再演する。割と急に決まった感のある会だけど、迷わずチケット購入。すると同日同会場で13時から 「雀太独演会」 もあるとのこと。で、こちらが16時半開演という、また中途半端な時間。事務所的には何らかの理由のあるダブル開催に思えるけれどさてどうなんだろうか。
まあ、そんな事とは関係なく、文之助贔屓の渋い落語ファンが集まって開演した。

小鯛 / 道具屋
文之助 / 播州巡り
豊来家一輝 / 大神楽曲芸
文之助 / 天神山
仲入り
文之助 / たちぎれ線香

小鯛さん、いつも通り少し猫背でひょこひょこと上がる。上がり下りの姿も個性的だと売りになるなと最近思っている。そして先日の若手グランプリ予選の 「やかん」 は抜群によかった。決勝も頑張ってほしい。
てことで、今日は 「道具屋」、表情や所作のバランスがとてもいい。なにやら落語家的風貌に磨きがかかったように思える。かなりレベルの高い開口一番だ。

そして、文之助さんの前にりょうばさんが舞台番で出てきた。上がった文之助さん、自分が枝雀に入門したころ、初めて舞台番したのがこのホールだった。その時楽屋にいた師匠の長男で2~3才だったのが、今のりょうばです。ドッと歓声上がる。時は巡るだな。そして 「播州巡り」、六代目の話からめて、面白くない、内容がない、と散々に言う。不思議なものでここまで言われると、いやそこそこ面白いやん、と思ってしまう。一つの作戦かな。
ただ、この噺内容ないといえばそうだけど、文之助さんだからこその面白さがあると思う。

次は色変わりで大神楽、豊来家一門から一輝さん。一門きってのワイルド派だ。何か他の人とは一味違う。
今日は鞠の曲芸をたっぷりみせた後、茶瓶に移る。一輝さん茶瓶よく使っているけど、最後の大技は今日初めて観た。何度か失敗後に見事成功したけど、失敗した方がなぜか値打ちが出る気がする。本当に失敗しているのだろうか。そんなこと含めて大神楽は楽しい。

文之助さん二席目のまくらで、政治ネタ少し。まくらとしていい感じの流し方だ。最近まくらで政治に触れる人減ってる気がするけど、主張じゃなくて、いらうことも噺家さんのまくらでは必要だなと今日感じた。
ネタは 「天神山」、鉄板だと思っていたけど、実は襲名後聴くの初めてだった。雀松時代に度々聴いていたんだ。もちろん枝雀さんの余韻を残す形なんだけど、最近この噺の下げ前の急展開が気になってる。芝居からの引用というか、改作なので説明すればそうなるんだろうけど、本来の正体がばれるところを盛り込むやり方のをちょっと聴きたいなと思っている。

最後は 「たちぎれ線香」、文之助さん、落語で噺が付くというのがあってと。そして、「天神山」 にも 「たちぎれ線香」 にも、小糸が登場すると。なるほど確かにそうだ。
で、10月の独演会で聴いた時もすごかったけど、今日ももちろんよかった。この噺の前半のキモは番頭が飛び込んできた若旦那を諫める場面だと思っているのだけど、今日は特に視線が長く厳しかったな。タバコで一呼吸おいて更に視線をやって、ようやく口を開く。「おすわりやす」。表情も所作もとても見ごたえがあった。
そして、後半の泣く女将、小糸の独白、最後の若旦那のセリフ。すべてに心をつかまれる。
文之助さんの落語は 「口入屋」 とか 「星野屋」 とか 「片棒」 とか、リズムに乗せてトントンと運んでいき下げに収束するのが一番好きなんだけど、最近は 「らくだ」 もいいし、この、たちぎれも。そうなると、人情噺や怪談噺、情が色濃く絡んでくるような噺も聴きたいなと思えてくる。襲名後高座数は減っている気がするけど、噺の幅は逆に広がっているのかな。

今日もいい会だった。だけどやっぱり文之助さんの高座もっと聴きたいな。最近は自分の会毎月する人結構いるので、どうしてもそういう人のウエイトが高くなってくる。好きな噺家さんがたくさんいることは素敵なことだと思うけど、いろいろとまた悩ましくもある。