2017.4.26 【二十五周年・その一 染雀晴舞台・芝居噺の世界@繁昌亭】

【二十五周年・その一 染雀晴舞台・芝居噺の世界】

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染雀さん、二十五周年で久しぶりの自分の会。僕が上方で好きな噺家さんはざっと30人ぐらいいるんだけど、その中にはたまさんや南天さんのように聴く機会が多くある人と、逆に少ない人がいる。自分の会をめったにしない染雀さんも聴く機会が少ない方の代表みたいな人だ。そして今回の企画は三回連続で 「芝居噺の世界」 を届けるというもの。染雀さんの芝居噺をたっぷり楽しめる企画、とても楽しみだった。

姉様キングス / 音曲漫才
生喬 / 相撲場風景~踊り・さつまさ
染雀 / 愛宕山
仲入り
あやめ / 厩火事
染雀 / 淀五郎

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今日の出番順がとても気になっていた。ていうのが、姉キンのおふたりがどちらも落語の出番もある時、お召し替えの時間が必要なのでなかなか難しい。まして今日は染雀さん二席、一体どう組むのだろうかと思っていて、プログラムを見たらなんと開口一番が姉キンだった。うん、それしか回せないな。てことで、繁昌亭史上まれにみる派手な前座の登場となった。そして冒頭からかつてヅラシスターズといってた頃のテーマを歌う。これ初めて聴いたけど爆笑だった。姉キンにも歴史ありだ。後はそんなに時間が長くなかったのでサラッと。でもやっぱり楽しかった。正直最近少し飽きてるなと思っていたのだけど、再認識した。

続いて生喬さん、はなしか宝塚の話、染雀さんのいろんな話から 「相撲場風景」、笑福亭のお家芸なんだけど、上方の代表的な相撲噺の中で、きちんと客席を描写しているのってこの噺だけだと思う。そんな意味では貴重だし、前半の、みつを取れ、のあたりは好きだな。でもやっぱり 「ジョンジョロリン」 の件が有名過ぎて前半がかすんでしまう。特に僕はエロ系の下ネタは別にいいんだけど、ジョンジョロリン系の下が好きじゃなくて、この噺終始前半のような展開で本当の 「相撲場風景」 だったら、すごくいい噺なのにと聴く度に思っている。
そして踊りは、さつまさ。生喬さんは比較的高座でよく踊る人だけど、いつも抜群に腰が安定してる。そしてくるくると、こちらも楽しかった。

染雀さん、自分はだいたいシャイなので、本来はこういうところで皆さんにしゃべったりはできない。ただ違う自分を演じることはできるので、芝居噺とかが好きなんだと。そこから 「愛宕山」、僕はこのブログでは同じ噺をしてる他の噺家さんと比べてどうこう言わないことにしてるんだけど、今日はちょっと例外で、三日前に聴いた南天さんの「愛宕山」と随分違うと改めて感じたけれど、この噺は本来染雀さんのように終始賑やかに展開させるものだろう。染雀さんこういう時にはすごくはしゃいでいるようにみえて、その楽しさがこちらにも伝わってくる。こういう言葉の選び方難しいけど、ちょけてるような染雀さんもすごくいいと思う。そして芝居噺の染雀さんとまた対照的だ。今日の二席はそんな狙いで選ばれたのだろうか。

仲入り後はあやめさん、女性みんなでもらった特殊な用途の石鹸で犬を洗った話で大爆笑、
で、噺は「厩火事」、これ以前あやめさんで一度聴いていて、その時の印象と随分ちがうんだけどな。前に聴いた時はとてもしっとりした 「厩火事」 で、めったに聴けないあやめさんの古典もいいなと感じた。でも今日はかなりギャグ満載にかわっていたように思う。冒頭のお咲さんの一言から客席をつかむ。兄さんにうだうだとしつこく、まるでからんでるかのようにいろいろ言う。でもここも面白い。そしてこの噺の見せ場、兄さんに 「別れてしまえ!」と言われて豹変する。その様がまた極端だ。そこからのろけまくる。お咲さんかわいい。更に茶碗を割ってしまう時の独特の表現も楽しい。とにかく相当に振り幅の大きな 「厩火事」 だった。

最後は染雀さん、お待たせ芝居噺の 「淀五郎」、志ん朝さんにもらったという羽織で登場、ここ一番の羽織らしい。で、「淀五郎」 は自分自身の話だと思っていると。
忠臣蔵通しの公演で塩谷判官役の役者が急病で出れなくなり、代役に指名された淀五郎、四段目の塩谷判官切腹の場、由良之助役の座頭が判官に初日二日目と近づかない。悩みに悩む淀五郎、という設定だ。
染雀さん、もう本息も本息芝居噺というよりまんま芝居じゃないか。でも、落語より芝居観てる感じでじわじわと心が動いてくる。芝居噺でこんな感覚になる人そう何人もいない。何か高座がギラギラしてくる。そして、三日目にして淀五郎がめでたく開眼、で、下げでコテンと。やっぱり落語やったんや、となる。とてもよかった。

まあ、盛りだくさんな会ですべて堪能したけど、染雀さんのとんでもない芸達者ぶりを改めて感じた会だった。
これで二回目、三回目がますます楽しみになってきた。二回目 7/22、染雀さん三席のネタ出しは 「軽業」 「昆布巻芝居」 「中村仲蔵」、そしてゲストが遊方さんと文三さん、またとんでもなく楽しくなりそうだ。