2017.4.23 【桂南天独演会@サンケイホールブリーゼ】

【桂南天独演会】

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いよいよこの日がやってきた。サンケイブリーゼの南天独演会、一昨年から二年後にはするという話があって、そして去年正式に発表されて、それからチケットをどういう買い方をすればいい席確保できるかとか、いろいろあっての今日だから 「いよいよ感」がとんでもなかった。待ちに待った、という表現がぴったりだ。
ブリーゼの建物に入ると一階でいきなり知り合いに会った。普段いろんな落語会に行ってる南天ファンや落語ファンが今日は相当ここに集結するはず、と思っていたら、入場後に会うわ会うわ、普通大きな会場のホール落語でもここまで続々知り合いには会わない。米朝一門の噺家さんにとって、ブリーゼで初めての独演会というととても特別な会だし、だから900キャパ完売の客席も聴き手の気合でいっぱいになる中、とうとう開演した。

鯛蔵 / 二人ぐせ
仲入り

開口一番は鯛蔵さん、今日のプログラムは南天さんだけじゃなくて、脇を固めるのが紅雀さんと鯛蔵さんていうのも完璧だった。鯛蔵さん、いつものようにスキップしながら出てくるようにみえる。電話の注意でユナイテッドからめて受ける。「二人ぐせ」 は、ぬかみそつけるところとか「呑める」の人がやたら楽しそうで、逆に千円取られて異様に驚き悔しがる。こういうデコラティブな表現が楽しい。とてもいい開口一番だったと思う。

そして南天さん、万雷の拍手で迎えられる。一昨年このブリーゼでの 「南光南天二人会」 の後、南光さんが 「来年もう一回二人会をして、次の年からは南天独演会にしよう」 と突然言った。でも事務所やブリーゼの反応は当初あまりよくなかった、と。でもその頃から南光さんが言ったという話はファンの間にも知れ渡っていて、二年間で段々と現実味を帯びてきた。そしてチケットはかなり早い段階で完売。期待が大きく高まって今日を迎えた。
南天さん、そこから入門願いに行った時のこと、修行時代のこと、師匠の南光さんと大師匠の枝雀さんのこと、訥々と語りだす。バカラの件とかよく落語会のまくらで聴いてる話もあるのだけど、他に今日初めて聴くこともあって、何か客席全体が聴き入る感じになって、そして南天さんも感極まって言葉につまって。で、客席からは度々拍手が起き、声も掛かる。こんなことはそうそう起こらない。しばらく絶句した南天さん、「大丈夫です」と言って噺に入ろうとした。また、大きな拍手。
ちりとてちん」 だ。最初少し声が不安定だったけど、すぐに戻った。南天さんのこの噺はとにかく楽しい。今日は茶碗蒸しの具でいろいろと遊ぶところで爆笑、そして竹が超ハイテンションで登場する。で、ちりとてちんを食べた時のアクション、のたうち回って下げ。最初心配気だった客席もすぐに南天さんの落語の世界に入っていった。
まだ二席も聴ける。

そして、ゲスト枠は紅雀さん。お茶子さんが舞台から引っ込む前に登場しすれ違う。前にもどこかでこのシーンみたな。そして、上がっていきなり 「南天兄さん長いわ、裏南天の話むっちゃしたいけど」。うん、確かに長かった。そのため紅雀さんの時間をけずらないといけなくなった、てことで裏南天の話はなしでネタに入った。
湯屋番」 だ。居候の若旦那が働けと言われて風呂屋へ行くことに。外回りや裏方をやらせようとする主人に番台に上がりたいとわがままを言い、そうなった後に起こるどたばたでワチャワチャな噺、これはもう紅雀さんにぴったりだ。当然とても楽しかったのだけど、できればまくらも本編ももう少しやって欲しかった。でもいいのかな今日はこれで。てことで、紅雀さん走って下りて客席わく。

南天さん、地元愛の話、枚方南天さんの地区の盆踊りは特別すごかったという話から 二席目は「だんじり狸」。
僕この噺がとても好きで、もちろん夏噺なんだけど4月に聴けるのがうれしくて、今日の三席のなかでは一番楽しみだった。雨の降る日は狸がだんじりを鳴らすと亡くなった親友の息子につい言ってしまった男、四人でだんじり鳴らしていた仲間に頼む。で、また雨の日、いろいろ都合があってみんな行けないのにだんじりが鳴る。そして誰も行ってないのに一体誰が。というところで噺は終わる。ずっと鳴ってるだんじり囃子が段々大きくなってくる中、南天さん黙って頭を下げて下りる。高座にはまだだんじりが、という余韻を残して、仲入り。幕は下りてもだんじりが止むまで誰も席を立たなかった。
まつり囃子が鳴ったまま幕が下りるというと、そう 「夏祭浪花鑑」 だ。文楽・歌舞伎で、こちらは最後の場面が凄惨極まりないんだけど、不思議と似通った余韻になってるように思う。そのあたりやっぱりそうなのかな。
ともかく 「だんじり狸」、今年また聴けたらいいな。

休憩の後、桜を愛でるカップルの話で、大阪では男の方がロマンチストだと。そこから三席目 「愛宕山」、今の季節真っ只中の春噺だ。そして、この噺も好きなんだけど、京都の旦さんが舞妓芸妓と大阪から流れてきた太鼓持ちと一緒に愛宕山まで 「野掛け」 に行く。その道中のドタバタの噺で、普通は割と賑やかに楽しく終始する。でも南天さんのは少し趣きが異なる。噺にゆっくりと入る、そしてハメモノの後、一八、繁八が荷物かついで山道登る場面で更に声のトーンが下がる。客席もシーンとする。尻付きで上がってきて食事になるまでそんな感じだ。ここがすごくいい。で、後半一転して賑やかに。かわらけ投げをやって見せる旦さんが成功していちいちご機嫌になる様で爆笑。いらつく一八、大阪では金を投げるなどと言って、そしたらと旦さんも小判を投げようとする。
後はもう一八のスーパー大活躍で噺は大いに盛り上がった。
南天さん座布団はずして頭を下げる。幕が下りても少し拍手が止まらない。一瞬ひょっとしてカーテンコールが、と思った。

ところで、何度か書いてるけれど、僕は上方落語の隠しテーマの一つに 「京vs大坂」 というのがあると思っていて、これもその代表的な噺だろう。やっぱり昔から仲良くなかったのかな。

ということで五席全部終わった時は余りの重量感に鯛蔵さんの噺で笑ったのは相当前のような気になった。
しかし、本当にいい会だった。もう今年の僕の NO.1 落語会はこれで決まりじゃないかと思えるほど。
そして、普段南天さんの噺聴いてる人一人一人の胸に今日の独演会はきっちり刻まれて、これからまた南天さんの噺を聴いていく礎となっていくんだろう。南天さんありがとう。

最後に今日のプログラム記載の師匠南光さんの 「ごあいさつ」 を添付しておく。読めるかな。

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