2017.1.2 【気分はご参詣@八聖亭】

【気分はご参詣】

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さて、2017年の落語初めは三年連続になる八聖亭から。裏サンケイともいわれる会だけど、本家よりこちらの方が面白いという人たちが集まって今年も満員のスタートだ。まあ、キャパは全然違うけれども、僕も含めてここに去年一昨年来た人はこの会を堪能したと思う。今年は開口一番が天使さんでなく方気さんだけど、他の四人は去年と同じ顔触れ。さあ、今年も落語ライブの始まりだ。

方気 / 看板の一
雀五郎 / 厄払い
米二 / 火事場盗人
仲入り
九雀 / べかこ
文都 / 愛宕山

今年の開口一番は方気さんだ。聴くのは三回目。師匠、大師匠のまくらで入ったけれど、今日の客層にはあまりあっていない気がする。ネタは「看板の一」、チョボ一の説明がなかった。客層的には不要と思うけど、一般的には必要かと。何か一貫性がない。でも内容はきっちり進んでいてそれなりに受けていた。クサさが勝ちすぎのようにも見えるけどこれは個性かな。

続いて雀五郎さん、新年二席目で早くも聴けるのがうれしい。「厄払い」 は掛ける人少ないけれど僕の好きな噺で、雀五郎さんでも去年何月かの高津で聴いてとても良かったのを覚えている。ネタ出しなので今日も楽しみだった。厄払い断られて 「部屋の隅にまだ厄残ってまっせ」 て言うのが面白い。「年越しのよばし麦」てのも謎だな。厄払いのように今はもう廃れてしまった風習を実感できるのも古典落語の楽しみだけど、雀五郎さんの佇まいが何かそんな事似合うと思う。五段落ちっぽい下げも楽しいし、いい高座だった。

中トリは米二さん、かねよ寄席でかつて名ビラが堂々と盗まれた時の話、自分の分だけ残っていてとても気が悪かった、と。なんか米二さんらしい話だ。そこから 「火事場盗人」 何度か聴いてる。確か小佐田さん作だと思う。落語の泥棒噺てのは、まぬけな泥棒がへまをして爆笑というパターンが多いのだけど、この噺は人情噺っぽい。かつて盗みに入った家が火事の現場で、赤子を葛に避難させたが、旦那がその葛を貴重品入れと思い、使用人と間違った泥棒に預ける。一旦持って帰って翌日再び現場に行くけど誰の子供なのか分からない。そこから18年経ってその娘が嫁に行く直前、京極の寺で実の父親と再会するという噺だ。
細かいところは無理な設定もあると思うけど、全体的にはいい人情噺に仕上がっている。下げ前の思いっきり泣かせにかからないところもいい。

仲入り後は九雀さん、若い頃はよく師匠と一緒に地方遠征をしたと。で、これは枝雀さんは関係ないけど、東京でチェーホフ寄席という企画があって、それでとんでもないご難にあった。そこから遠征でご難に合った噺家の噺をします。「べかこ」 は,これまで九雀さん含む限られた何人かの人でしか聴いていないのだけど、結局城中で姫にお目見えするのとしないパターンがあって、九雀さんのは後者になる。どちらにしても噺の印象は大きく変わらないけど、九雀さんは侍と噺家が立ち回りを演じる場面がいい。それと下げもバカバカしくて好きだ。
そして、泥丹坊堅丸-こんな字かなーの愛すべきキャラもまたいい。

最後は文都さん、正月から 「愛宕山」 聴けるのは何だかめでたい。文都さんのはきりりとしててとてもいい「愛宕山」 だ。途中、大阪では金をまく、うんぬんの場面がなかったけど、僕は上方落語の隠しテーマの一つが 「京VS大坂」 で 「愛宕山」 もその代表的なネタだと思っているのであるほうがいいな。後、一八が飛ぶのを躊躇するところや、押されて飛んだ時の絵、竹をしならせて上がってきた時の演技なんかがリアルでとても楽しい。
何年も前に文都さんの新作の会で、ある作家先生のトークが余りにも準備不足でグダグダだったことがあって、それ以来あまり聴いてなかったんだけど、また聴くようにしよう。かちっとまとまっているのがこの人の落語の良さだ。

落語初めのこの会今年も過去二年同様期待を裏切らなかった。今年もいい落語をたくさん聴けそうな予感で、次の小屋森ノ宮に向かった。