2016.7.26 【夏休み文楽特別公演・第2部名作劇場@国立文楽劇場】

【夏休み文楽特別公演・第2部名作劇場

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「薫樹累物語(めいぼくかさねものがたり)」
  ・豆腐屋の段  ・埴生村の段  ・土橋の段

「伊勢音頭恋寝刀(いせおんどこいのねたば)」
  ・古市油屋の段  ・奥庭十人斬りの段

今年も三部構成の夏休み公演、僕はいつもの二部構成よりもこちらの方が好きだ。なぜなら、公演後のまともな時間に普通に食事ができるから。25分の休憩時間にあわててうどんやラーメンをかきこまないといけないのは、文楽公演の楽しみを損なう大きな欠点だと思っている。通し狂言の時はある程度仕方ないんだけどね。
てことで、今日はまず2部から。14時スタートで18時25分まで。結構長い。

最初は「薫樹累物語」。出だしの豆腐屋の段で、ベテラン太夫陣があまり声が出ておらず、段々睡魔に襲われだす。しかし、後半高尾の亡霊登場で目が覚める。こういう場面転換的な仕掛けが文楽は面白い。
話の筋としては、妹の累が谷蔵と祝言あげることに嫉妬した高尾の怨念によって、その容貌が変わり果ててしまう、という無茶な展開。なんでもありな文楽やから、ちょっと突っ込む程度にしとくけど、この件がこの先の筋書きの中心になってくるわけだ。

続いて、埴生村の段、咲甫さん、團七さん登場。自分の故郷に戻って与右衛門と名をかえた谷蔵と鏡をみること禁じられて容貌の変化に気づいていない累はひっそりとくらしている。咲甫さん、地味な場面の丁寧な語りが印象的だ。後半は千歳さんと富助さん、みにくい顔に気づいた累が動き出し話は急展開。千歳富助で盛り上げていく。累の和生さん、与右衛門の玉男さんも熱演だ

そして、土橋の段、身を投げようと向かった累を追う与右衛門、その前に通りかかった金五郎と歌潟姫の二人連れによって話が複雑になる。更に嫉妬に狂う累は歌潟姫に襲い掛かる。それを止める与右衛門、そしてとうとう累にとどめをさす。この場面は呂勢さんと清治さん。呂勢さん狂った累を語りながらその不憫さが伝わる。そして清治さんはあくまでクールに。最後の累と与右衛門の立ち回り~このチラシの場面~は和生さんが圧巻だった。

まあ、主要キャストが当然のように死ぬのが文楽だ。この演目初めてだったけど十分楽しめた。

そして次は「伊勢音頭恋寝刀」、刀をモチーフにした話だ。簡単に言えば、主人筋から盗まれた銘刀を福岡貢が取り返そうとする中で、女郎屋が舞台になって人間模様が展開され、最後はやっぱり…という話だ。

まず古市油屋の段、ここはもう津駒さんが圧倒的だ。遊女お紺、仲居万野、料理人喜助とか、癖のある人物が次々登場するのだけれど、それぞれの演じ分けがなかなかすごい。4月公演の時も思ったけど、やっぱり今一番聴きたい人だ。とりわけ、万野の意地の悪さが印象的だった。そして寛治さん、熱い津駒さんに、さらっとでも的確に音を入れていく。とてもいいコンビだ。もちろん人形は、貢の勘十郎さんとお紺の簑助さん。本心隠すお紺と荒れる貢、丁々発止だけど女が強い。

そして、奥庭十人斬りの段、本物の刀を手にした貢が、お紺と喜助以外の登場人物を斬って斬って斬りまくる。もう完全にぶっ飛んでる。しかも女の手や子供の足を斬り飛ばす。でもこんな演出江戸時代からやっていたのか。少しやり過ぎの感じもあるけど。それで、本物の刀と折紙(鑑定書)を持って貢は主家のもとに届けに走るんだそうだ。いや恐ろしい侍だ。
落語ファンの人なら知っていると思うけど、京都が舞台で「妖刀村正」をモチーフにした「大丸屋騒動」て噺があって、そっちも村正が人を斬りまくるうんだけど、話としてはそっちの方がよほどよく出来ていると思う。
まあ、文楽の主題は話の完成度じゃないからいいんだけどね。

てことで、文楽2部とても楽しかった。もう一度行きたいところだけど8月9日までなかなか忙しい。
明日は1部に行く。これも楽しみだ。