2015.12.30 【生寿の真っ向勝負・たま生寿二人会@八聖亭】

【生寿の真っ向勝負・たま生寿二人会】

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八聖亭はJR福島駅から商店街を7~8分歩いたところにある。この商店街、昼間はごらんのようになんとなく活気に欠けるけど、夜になると飲屋居酒屋がずらりと並ぶ楽しい通りになる。
先日夜に来演した寒空はだかさんが、「なんだか随分楽しそうな商店街ですけど、12月なのにクリスマスの雰囲気が全くないですね」と。
そう、商店街あげてイベントとか、そんなことしないんだ。でも「売れても占い商店街!」というキャッチはちゃんとある。八聖亭の落語会はこの商店街をキョロキョロしながら行くのもまた楽しい。
ちなみに、ここの席亭は八方さんなので、月亭一門の誰かが開口一番になることが多い。

たま・生寿 / オープニングトーク
方気 / 時うどん
生寿 / 蔵丁稚
たま / 宿屋仇
中入り
たま / 芋俵
生寿 / 代書屋

予約で満員となったこの会、生寿さん、まず一人であがって2-3あった空席を入口近くにするため、お父さんが移動することになる。生寿さん「はい、早く奥に行って。いまさらお母さんの横じゃなくてもいいでしょう」。これでまず爆笑。「使えるものは何でも使う」と。
そこから、「客席がまるで月刊笑福亭たまですね」。で、「たま兄さんにはいろいろとお世話になっていて、初めてギャラを頂いたのも兄さんの会です」。と紹介してたまさん呼び込む。
生寿さん「ほら、全部月刊たまでしょう」 たまさん「そんなことない。半分ぐらいや」。
たまさん、ご両親の前で正直すぎるよ。
で、トーク開始。生寿さん「だいたい兄さんはデリカシーに欠けるんです」。具体例聴くと確かにその通りだ。特にとある女流噺家さんに対しての発言は。
状況不利とみたかたまさん話題を変えて、先日発表になった文化庁芸術祭優秀賞を受賞した仁智さんと新治さんの事で、一昨日繁昌亭楽屋で新治さんと一緒だった時のあんなこんなに。そこから話がまたオフレコゾーンに入っていき、約20分間盛り上がりまくったトークの結論は、「今日は六代文枝師匠のトリビュート落語会や」

もう客席は暖まりまっくていて、こういう中での開口一番も逆にしんどいのではと思っている中、方気さん登場。僕は初めてだ。「時うどん」一人バージョン~時そばのうどん版だ。吉朝一門以外でもこの型で時うどんする人、上方にも時々いるけど、僕はやっぱり二人バージョンの方が面白いと思う。
それはともかく、方気さん、結構こなれていてスムースで楽しかった。

生寿さん、今年よかったことは「はなしかタカラヅカ」でルキーニができたこと。相当うれしかったようだ。後、孫弟子に厳しかった松喬さんに実は可愛がられてたのが亡くなった後に分かったこととか。
そこから、今日の会は後半の1席ずつがネタ出しだったので、「なにをしようか、蔵丁稚にします」ここで拍手。
生寿さんの芝居噺は、「はなしかタカラヅカ」を毎年みてることもあるのかかなり好きなんだけど、今日は切腹の場面の緊迫感や定吉の突然素に返る様がよかった。

たまさん、生寿さんに一言デリカシー関連を振ってから、同様に「何をしようかと考えてたんですけど、中トリなので宿屋仇を」。またここで拍手。大好きなネタだ。八聖亭の2列目真ん中でたまさんのこのネタを聴くと、とにかくド迫力だ。よくこれだけのパワーが持続できるなと感心する。で、このパワーがあるから無言くちぱくだけの演出がまた効果的になる。それと源兵衛の色事師の件、後二人に先にウソだってのをばらしてたな。これで噺の流れどう変わるのか。それと伊八が割とあっさりめだったな。

中入りはさんでたまさん二席目、出囃子が「長崎さわぎ」じゃない。ここで変わり囃子の説明。生寿さん「代書屋」するので、たまさんが代書屋する時は「野崎」で出たりすると、生寿さんにも勧めたら「無理です」。それで、代書をつけてもらった文我さんの「せり」で出ようかとなってた。何ででるのかお楽しみに、と。
ネタは「芋俵」、バカバカしくてコンパクトで落語らしくて楽しい噺だけど、たまさんのになると俵の中に入れられてる男がとてもかわいそうというか、哀愁を感じるような描き方に聴こえる。まあ、そこがこの噺の肝なんだけど、ただ笑いだけじゃなくて、逆様になってあんなことされてと思ってしまう。

そして最後は「代書屋」フルバージョンだ。千朝さんで何度か聴いてるけど、それ以外の人ではなかったかな。どうしても演者が多い噺だし、枝雀さんの、春団治さんの、まだ他にもあって僕らはいろいろ聴いてるので、フルバージョンきけたのはうれしいんだけど、それが珍品的な扱いにもなりかねない。今日も前半はすごく面白いんだけど、後半がやっぱり間延びして感じる。フルバージョンと言ってもとんでもなく長いわけじゃないので、もっといろんな人が掛けるようになればまた変わってくるのだろうけど。
生寿さんも基本はショートバージョンだろうし。

ということでたっぷり2時間40分、素晴らしく充実した落語会だった。これで前売り1500円は余りにも安すぎる。最後に生寿さん、次回は3月13日でゲストは阿か枝さん、僕は「一文笛」をやります。でもその日はみなさん、たま兄さんの阿倍野独演会ですよね。という落ちでお開きとなった。

これで今年の落語納め、とても気持ちよく帰路につくことができた。