2015.11.27 【月刊笑福亭たま・11月号@繁昌亭】

 【月刊笑福亭たま・11月号】

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月刊たまは、たまさんが三席+新作ショート落語をするということで、それだけで十分に楽しいんだけど、更に三席あって、ゲストの人や若手枠の人が面白ければ最強な会になる。この人選も当然たまさんがいろいろ考えてやっているのだろうから、その辺りの思惑を考えても面白いかもしれない。さて今日のたまさん以外の演者の人たちどうだったのだろうか。

米輝 / 看板の一
染太 / クラシックてほんまにえ演歌
たま / ちしゃ医者
たま / 茶屋迎い
中入り
米二 / 除夜の雪
たま / 新作ショート落語~新作ネタおろし「まぬけ泥」
(三味線) はやしや絹代

またまた米輝さんだ。ざこばさんの動楽亭楽屋での賭け事ばなしから「看板の一」。若手の人がよく掛ける噺だけど、この噺はおやっさんピカレスクさというか、昔はちょっと悪かったんやで感がどう出るかだと思っている。米輝さんのは若いもんを諫める場面とか、金を返してやるシーンとかでそんな空気がよく出ていた。たまさんの会では安心の開口一番だろう。

続いて染太さん、たまさんとあまり縁があるようにはみえない人だけど、どこかでつながりがあるんだろう。
ネタは新作で、クラシック好きの人が演歌好きの人に、演歌とクラシックはこれだけ似ている曲がいろいろあるということを次々解説していく噺。僕は演歌もクラシックもそんなに詳しくないけど、音楽には似た曲というのは相当あって、結構そのジャンルに詳しい人には有名だったりする。今日の組み合わせもそういうものかなと思え、あまり落語的には聴こえなかった。

たまさんが三席するときは一席目がメインのまくらになることが多い。実はこの会今月から300円値上げした。相変わらずほぼ満席じゃないと思っていたけど、1Fはそうでも2Fがかなり空席多くて、トータルの収益では上げない方がよかったので2月から戻します、と。ここで拍手。この辺りの判断の早さがたまさんらしい。そこから話題は例の協会員逮捕事件のことになり、過去の逮捕者との比較で処分はどうなるのかと。で、ここからまた先月の書けないまくらの続きの話になっていった。
ネタはまたも「ちしゃ医者」。今年たまさんで3回目だ。前から言ってるけど、この噺最後に最大のヤマがくるあたりの構成がよくできているとは思うのだけど、あまりにも汚いというか、そんなに得意ではなかった。だけど今日は慣れたのか不快感より面白さがかなり勝った。たまさんの表現もエスカレートしてきてる気がするけど、オーバーアクションになるほど不快感が小さくなるのか。でも、なんかはめられてる気もする。

続いて「茶屋迎い」、江戸の「不幸者」だ。東西結構やり手のある噺だと思う。僕はたまさんの古典もとても好きなんだけど、それは爆発的な面白さの部分であって、聴いているだけで気持ちがいい、という古典にはたまさんではあまりお目にかかれなかった。だけど今日は後半の親旦那と昔なじみの芸妓との会話あたりにそれがあった。いかにも上方の「粋」を感させた。たまさんの今の噺のラインアップに「聴いて気持ちのよい古典」が加われば更に強力になる。これからこの点でも目が離せなくなった。しかし、これも「ちしゃ医者」と並べたたまさんの戦略かもしれない。

中入り後は米二さん、米朝一門で今一番脂の乗り切ってる人の一人だと思っている。なんかベタな表現だけど。こういう人がゲストだと期待感が更に増す。米朝全集で噺覚える人が多いことをさらっといらってからネタに。
舞台がお寺だけど、まさか、やっぱり「除夜の雪」だ。もちろん今年は初めて。まだ11月だけど急に寒くなったとこなので季節感もいい。この噺もちろん後半がメインなんだけど、僕は前半大晦日のお堂の中で寺子三人がひっそりわちゃわちゃする場面もなかなかだと思う。新人の珍念が、炭、お茶、魚と次々に和尚からくすめたものを差し出すたびに兄弟子の言うセリフ「ええのんに決まってるやろ」がいいな。これ多分米二さんオリジナルだと思うけど、こういう繰り返しの予定調和好きだ。そして後半、伏見屋の御寮人登場から噺は一転する。一歳半の子供を残して死を選んだ御寮人の無念さ、そして提灯を返しに来た律義さ。もうやられっぱなしで、米二さんの前半とは変わった静かな口跡が客席に染みわたる。本当にいいものを聴かせてもらった。正直月刊たまであることをしばらく忘れていた。

最後たまさん登場の前に予告のあった特典映像の上映で、これまでの月刊たまの歴史をみせる。これも楽しい。で、これで時間かせいだからすぐに出てくるのかと思いきや、今日も「長崎さわぎ」が延々と流れる。「ヨイヤサ~、ヨイヤサ~」
結局いつも通り待たせて登場。新作ショート落語は、リンパが面白いと思うけど、この間美術館に行ったところだったので、尾形光琳でネタわかってしまった。他はたまさんも言ってたようになんか尻すぼみで終わった。
新作ネタおろしは「まぬけ泥」、ある家に入った泥棒の前に同業者がすでにいて、もめてたところに家人が帰宅、あわてて一緒に隠れるとこれまた同業者で最後に入ったものが一人成果をあげた、という冒頭部分から面白い。そして二人がペアを組み後半は噺が変わっていく。いい展開でだと思っていたけど、たまさんのさっきのつぶやきでは根本的に再構成らしい。期待して待っていよう。

てことで、今月も相当楽しかった月刊たま。これが贅沢なことに明日はまた日曜独演会があって。大ネタ「紙屑屋」がかかる。あー楽しみだ。そして今回はやはり米二さんの「除夜の雪」が秀逸。なんと、これも千朝さんの会があって二日続けて聴ける。まさに連日の落語三昧だ。