2015.11.9 【たまの微笑落語会@高津の富亭】

【たまの微笑落語会】

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微笑落語会は、たまさんが基本2か月に一度行っている古典ネタおろしの会。爆笑じゃないので微笑なんだそうだ。毎回三席ネタおろし、たまさんは新作に比べれば古典のネタおろしは台本があるから楽だ。みたいなことさらっと言うけど、この会だけでも一年に20本近くおろしてるわけで、大量にネタおろしする人としない人ではその人の落語の密度が時間とともにどんどん変わってくると思う。僕もそうだけど、熱心なたまファンの中には新作だけでなく古典も推してる人結構いる。
ということで、開演前の二番太鼓、笛がいやに不安定だ。客席で受けだしてきた。そして、最後のところは予想通りはずれてドカンときた。

天使 / 元猫
たま / 四人ぐせ
治門 / へっつい盗人
たま / 饅頭怖い
中入り
たま / ふたなり

天使さんあがって、「さすがは微笑落語会、開演前から受けてましたね」。それで、笛は誰が吹いてたんやろ。
「元猫」はもちろん「元犬」の改作。今年の2月22日の「猫の日」に猫好き噺家が集って繁昌亭で開かれた落語会でおろした噺だそうだけどよく出来ている。それに、天使さんの猫愛が感じられる。天使さん twitter でうだうだ言うてるのも面白いけど、やっぱり高座の方が素敵やと思う。

たまさん、秋は文化関係の予算が計上されているので学校寄席が多いと。それで先日あやめさんたちと行った中学で手書きガリ版で創ったプログラムがやたら詳しくて、たまさんが知らないあやめさんのプロフィールやエピソードまで載ってて驚いたと。現物をちらっと見せてたけど立派なものだった。
ネタは「四人ぐせ」、この噺と言えば文三さんなわけで、若手の人も文三さん系の派手な演出で楽しくすすめることが多い。でもたまさんのは少し違って、所作もテンポも少しゆっくり目だ。こうなるとエキセントリックさが影を潜め、友人同士の会話というのが強調される。こういう会話を楽しむような「四人ぐせ」もありだなと、ちょっと意表をつかれた。

続いて治門さん、以前船場寄席を文福さんが仕切っていたころ、弟子の和歌ぽんさんが高座で固まってどうにもならなくなった時、私服の文福さん出ていって「今から公開稽古や」、と噺をすすめておりた。で、次に上がったぽんぽ娘さんが「では、今から船場寄席開演です」と。今日の会とはあまり関係ないけど、いい一門だな。
噺は「へっつい盗人」、この噺限られた人しかやらない印象が強いけど、序盤から最後まで終始わちゃわちゃしていて体力がいるように思う。少し控えめに聴こえたんだけど、もう少し突っ走ってもよかったのでは。

たまさん二席目のまくらでまた書けない発言。いろんな立場ちゅうもんがあるやろけど、僕はたまさんに賛成だな。ネタはどうなってるの、と思うほど長いまくらから「饅頭怖い」。この噺、江戸版と上方版でかなり趣きが違うのはよく知られたことだけど、たまさんのは女の狐や幽霊の話の部分かなり怖かった。江戸版の前座噺の方がもちろんすっきりしているけど、僕はやっぱりやや無理やり感のある入れ子構造の上方版の方がいい。有名な割にする人それほど多くないけど、たまさんにはどんどんかけてほしい。

中入り後一席残しで「ふたなり」。時間がおしてるからと、いきなりネタに入った。この噺何度か聴いてるけどどうもいい印象がない。人が簡単に死に過ぎるというか、落語にしては珍しくいい人が出てこない。せこい小悪党みたな登場人物ばかりだ。下げと演題もそこにもっていくのは無理があるようにも思うけど、当時の風俗としてはよくある話だったのだろう。たまさん、古典のバリエーションとしてこういうちょっと変わった噺も有効なんだろう。

最初にも書いたようにたまさんの古典ファンてのもよくいるんだけど、まず時間が短くなって分かりやすくなってるのが多い。それにより味が削がれてしまうことも時にはあるけれども、概ねうまくいってる。来年以降の再編でこの会の位置づけや開催サイクルがどうなるのかだけど、できるだけ今の形で続けてほしいところだ。