2015.11.2 【桂文之助独演会@心斎橋劇場】

桂文之助独演会】

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文之助さんの会の中ではこれが一番メインの会になるのだろう。襲名後高座数が減っているといっても、相変わらず安定して楽しい噺を届けてくれる文之助さん。先週の「らくごビレッジ」で数か月ぶりに聴いて今日がすごく楽しみになっていた。3席たっぷりだ。

団治郎 / 狸さい
文之助 / つる
文之助 / 百年目
中入り
南光 / 火焔太鼓
文之助 / 蛸芝居

団治郎さん、いつもの米朝さん内弟子時代のまくらでそれなりに受けてはいたけど、文之助独演会なんだから本人にまつわる話をしてほしかった。それが筋だと思うし。話すことなければいきなりネタに入っても。落語はいつも通りきっちりだったし。

文之助さん、ハロウィンやラグビーの話題から時事ネタ「寺田町維新の会」で爆笑。まくらたっぷりの後一席目は「つる」。実はこれも楽しみだった。もちろん聴くの初めてだし、最近ベテランの前座噺にはまってることもあって。で、よく聴く「つる」よりもアホな男の前のめり感が強い。文之助さんの落語はリズム落語と言うか、テンポで聴いてて気持ちの良くなる落語だと思っているので、前のめり感はプラスに働く。とても楽しい「つる」だった。
二席目冒頭でこれに触れて、高座にかけたのは数十年ぶりで緊張のかたまりだったと。

二席目は「百年目」。文之助さんで聴くの三年ぶりぐらいだ。一般的にはもちろん今回の目玉だ。良かった、もちろん良かったんだけど、米朝一門で年季の近い人の中ではやっぱり「百年目」がもっといい人いる。僕は落語会の感想はライブレポートのつもりで書いているので、他の演者の同じネタとと比べてどうこうは基本的に書かない。
でもこれはやっぱり比べてしまうネタだ。各馬が超絶仕上げでゲートインするG1レースのように (例えがおかしいかな) 達者でない百年目なんてない。今日の文之助さんのは、番頭の喜怒哀楽の落差があと少しあればと思った。

中入り後は南光さん、一門の惣領弟子との共演で、これも楽しみのひとつだった。お二人はもちろん枝雀さんの一番弟子と三番弟子になるわけだけど、最近はこの一門も直弟子同士の共演が減ってきて、枝雀一門会とかになると南天さんとかの孫弟子世代が人数的には多数になることが多い。ある意味僕らには淋しい気持ちもあって、今日はお互い何を言うのかなと。南光さん、上がっていきなり「百年目、長いわ」。そこから、弟弟子と百年目の話、今年のブリーゼでの南天さんとの親子会で、見事な「百年目」を聴かしてもらったのだけど、自分もこの噺をすることには全く触れずに。何か優しさを感じた。
ていうことで、ネタは「火焔太鼓」。もちろん江戸ネタだけど、最近は上方でもかかる。ただやっぱり直しきれてない印象のが多いのだけど、今日の南光さんは違和感がほとんど感じなかった。かと言ってもちろん結構さわってる。道具屋の主人のアホ度が江戸版よりかなり上回ってて大爆笑編に仕上がってた。

最後は文之助さん、「まあ、火焔太鼓も長いですけど」。そこから、いろんなことに凝り性の南光さん、お稽古事の発表会でしゃべりで大受けして、師匠に怒られた話とか。で、兄弟子への感謝の後、「蛸芝居」。こういう噺はこの人に合う。設定がめちゃくちゃバカバカしい言わばSF落語みたいな噺で、蛸の口マネとか、墨の効果のシーンとか場面転換も激しくて、一気にテンポよく進めていかないと噺が間延びしそうになる。こういうのをきっちりつかまえた時の文之助さんの落語は最高だ。

盛りだくさんで今年もいい会だった。正味3時間近くかかったけど長さは全く感じさせない。文之助さんにはまた勉強会のペースを襲名前に戻してほしいところだ。それともうひとつ、この心斎橋劇場なかなか見やすいポイントてのが難しくてどちらか言えば苦手な劇場だったけど、今日ようやく見やすい席がわかった。それも今日の収穫だな。