2015.9.24 【九雀奈々福二人会@八聖亭】

【九雀奈々福二人会】

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開場して中に入ると、浪曲の演台と落語の高座がふたつ並んでいた。初めて見る景色で期待が高まる。以前から一度聴きたかった奈々福さん、九雀さんとの二人会が実現するとあっては行くしかない。即座に予約した。

八斗 / 代書
九雀 / ウェーブソング
奈々福 / 次郎長伝~お民の度胸 (曲師) 沢村さくら
中入
奈々福 / 仙台の鬼夫婦
九雀 / 帯久

八斗さん、「この会の開口一番に呼んでもらえて光栄です。古典をきっちりやらせていただきます。」と「代書」。
最近さっぱりとした印象で聴きやすくなった感のある八斗さん、宣言どおり非常にきちんとした高座だ。この噺いつも皆さんの工夫しまくりのを聴いているので、一瞬物足りなく感じたけど、いやこれでいいのだと思い直した。
ただ、代書屋が儲かっても儲からなくてもいつも難しい顔をしてるというのを、きちんと取り込むのなら、「儲かった日も代書屋の同じ顔」という川柳も入れた方がよかったと思う。

さて九雀さん、プログラムに一席目は小佐田さん作の「ウェーブソング」となっていて、どんな噺やろかと。それがなんと、この日のために小佐田さんに発注した浪曲根問的な噺のネタおろしらしい。九雀さんの問いかけに答えた客席は浪曲ファンが3分の1ぐらいだ。噺はジャックという外人の友人に大阪案内したトオルに、更に銭湯に行きたいというところから始まる。で、行った銭湯にいたのが浪曲おやじ、ここからおやじの浪曲レッスンが始まる。
いろんな演目のさわりを、九雀さんうなる、うなる。で、ジャックに対して英語で言えばウェーブソングだと。
この一席で落語ファンと浪曲ファンとの垣根がかなり低くなったと思う。この会の一席目にこういう話をもってくろ、演者も作者も大したものだ。

続いてお待ちかねの奈々福さん、僕は今まで数えるぐらいしか浪曲聴いてないけど、奈々福さんえらくまくらが面白い。明治期の全盛時には浪曲師が3000人もいて偉そうにしてた名残で、今もあまりまくら振らない人が多いと。で、今日東京の浪曲師では初めて繁昌亭昼席に出た話を。浪曲なんかほとんど聴いたことない人ばかりの中で頑張ってきたと。このまくらなら繁昌亭でも受けただろう。演目は次郎長伝の一席、お民という女性がやたらと魅力的だ。しかし、文楽三味線に負けず浪曲三味線もいいな。リズムの刻み方がよく似ているところもあって、基本後のりに聴こえるんだけど、語りと三味線の絡み方が浪曲の醍醐味だな。素浄瑠璃との違い、感覚的には分かるんだけど、もっと浪曲聴きこまないとだめだ。

中入り後、続けて奈々福さん、演目は「仙台の鬼夫婦」。こちらも女性がいい。だめな夫にとてつもなく厳しい。そして信念がある。浪曲の登場人物はその魅力がすごくストレートに伝わってくる。ストーリーは予想通りのハッピーエンドで大団円。浪曲ファンも落語ファンも一体になって大盛り上がり。奈々福さんとても気持ちよく本日の口演を終えただろう。しかし、この後九雀さん、この浪曲モードでいっぱいになった客席を、ネタ出し「帯久」でどうもっていくのか。落語ファンとしてはすごく興味があった。

てことで、あがった九雀さん、「だから、トリであがって、て言ったんです。この後一席するの嫌です。」とか言って笑いをとりながら、「大体、途中でちょうど時間となりました。と言っておりるのはずるい。落語でそれすると、みんな怒り出す。でもそれが許されるのは、筋じゃなくて語りを聴いているからでしょうね。」と分析して、徐々に空気を緩めていく。そして、最後は浪曲に合わせてストーリーのしっかりある噺をします。と「帯久」。
九雀さんの「帯久」は何度も聴いているけど、他の人と比べて嫌な噺テイストが薄くて僕は好きだ。結構劇的な展開なので皆さん聴きいっていた中、無事落ち着くことろに落ち着いてほっとした客席に向かって、「さて、この後この話はどうなりますか、今日はちょうど時間となりました。」 これでドッカーン、これが今日の下げだった。

全体的な構成としては、九雀さんが大阪で奈々福さんを迎えるための万全のプロデュースを行い、奈々福さんが見事それに応えた素晴らしい二人会だったと思う。これまで異業種コラボの二人会はあまり好きじゃなかったけど、こういう会ならこれからも続けてほしい。また客席では浪曲ファンも落語ファンもきっと増えたと思う。それもこの会の成果だろう。