2015.7.10 【たまの微笑落語会@高津の富亭】

【たまの微笑落語会】

たまさんが2か月に一度開催してる古典ネタおろしの会。以前と比べるとたまさんの古典がすごく充実してきているので、とても楽しみな会になっている。しかも、今回はなんと「らくだ」だ。らくだマニアが現れるからとネタ出ししない人もいる中で、今回は1か月以上前からネタを出してた。果たして本当にらくだマニアは現れるのか。波乱含みの開場だ。

笑子 / (腹話術)
華紋 / 商売根問
たま / ちしゃ医者
たま / 花筏
中入
呂竹 / 崇徳院
たま / らくだ

オーストラリアから帰国中の笑子さんが急遽前座で登場。メルボルンコメディフェスティバルの話で受けた後、腹話術。寿司職人姿の人形のキャラがすごく楽しい。で、また腹話術が上手い。そう言えば学光さんの腹話術も達者だけど、繁昌亭とかに時々出てる腹話術師よりも噺家さんの余芸のほうが上手いてどういうことだろうか。
続いて、本来の開口一番だった華紋さん、なんと今週3回目の落語会全部この人が開口一番だ。これは珍しい。かなり師匠連の信頼が厚いんだろうな。ネタは商売根問で、今日が一番よかったと思う。
たまさん、一席目は「ちしゃ医者」。正直この手の噺は苦手だ。人間の根源的な生理の部分なので、落語に出てくるのも当然なんだけど、受け付けないものは仕方ない。でもコンパクトにまとまっていてよく受けてたし、たまさんの持ちネタとしては重宝するのでは。
続いて二席目、出囃子は月光仮面。どうして? と思ってたら、文福さんの話が始まった。「花筏」だから相撲つながりだな。若い頃から文福さんのサービス精神はすごくて、でも切れやすかった逸話で爆笑。このネタは好きなんだけど、少し一本調子気味に聴こえた。前のネタの印象に引っ張られたのかもしれない。

中入後は呂竹さんで「崇徳院」。見た目に貫録が出てきていい感じだけど、少し噛み過ぎだ。らくだの前なんだからもっとイメージ的に軽いネタでもよかったのでは。
そしていよいよという感じで、たまさん登場。「ちょっと長い滑稽噺と思ってください」と振って始まる。僕自身は「らくだ」が特別好きでも嫌いでもないけど、「たちぎれ線香」や「百年目」と同じで上方では大層なネタなのは間違いない。誰がああしたこうしたと言うのがファンの間でも、噺家さんの間でもおそらく語られるのだろう。そんな注目の中で始まった。前半はややコンパクトになってるくらいで、それほど大きな変化もなく進んでいった。で、後半屑屋の変化が早くて激しくてしつこい。一気に立場が逆転だ。ここは当然この噺の一番の見所なわけで、このもって行き方がたまさんらしくてよかった。そして、秀逸だと思ったのは、屑屋の行動を一つだけ根本的に変えてしまった点。それでこの人の戦略家的な面が見えてきて、ただの酔っ払いでなくなってくる。これが今日の「らくだ」のポイントだったと思う。43分ぐらいかな。それでもかなり短いし、きれいにまとまっていてギャグ的作りも結構あって、久しぶりに素直に楽しめた「らくだ」だった。

今日の入りは70人ぐらいか。それでも後ろの方にはらくだマニアらしき人たちの姿もみえた。たまさんの落語、これでまたステップが上がったように思う。