2017.12.17~12.19 【東京寄席巡り】

2017.12.17~12.19 【東京寄席巡り】

12/17 「末廣亭・昼の部」

どっと鯉 / 他行
風子 / ? (太巻半額の新作)
小天華 / マジック
鯉橋 / 元犬
ひまわり / 村越茂助 左七文字の由来
一矢 / 相撲漫談
小文治 / 強情灸
王楽 / 普段の袴
陽・昇 / 漫才
金太郎 / 時そば
金遊 / 小言念仏
宮田章司 / 売り声
遊三 / ぱぴぷぺぽ
仲入り
桃之助 / 反対俥
米福 / 弥次郎
遊吉 / 紀州
ボンボンブラザース / 曲芸
遊馬 / 蒟蒻問答

さて4月以来8カ月ぶりの東京寄席巡り、今回のメインは寄席じゃなくて17日夜の 「小ゑんたま二人会」 なのだけど、いつものように早朝の便で羽田に到着。しばらくラウンジでぼおーとした後、芸協の末廣亭に向かった。いつもはどうしても落協の寄席が中心になるのだけれど、色物も含めてみたことない人も多く楽しみだった。

最初は盛り上がらない感じが続いていたけど、講談のひまわりさんが上がると舞台の空気が一変して明るく華やかに。この噺初めて聴いたけど面白い。
そして王楽さん、父親ネタで客席をつかみ離さない。「普段の袴」は上方ではまずかからない噺、こういうのが聴けるとうれしい。王楽さんさすがに華がある。
漫才の陽・昇さん、十二支のネタが楽しい。
金太郎さんの 「時そば」 は、声がいいし勢いもある。そしてまずそうな顔がとても上手い。
そして宮田章司さんの物売りの声、これは初めて聴いたけどとてもいい。なんと85才だそうだけど、「物売りの声は今で言えばラップなんです」 から始まって、客席からリクエストに次々応えていく。元々僕は 「次の御用日」 なんかの物売りの声好きではあるんだけど、ざる、朝顔、納豆、あめ、……。この人だけでも今日来てよかった。
仲入りは遊三さん、古典が聴きたかったな。それにしてもこの新作はどうなのか。
桃之助さん、明るくて分かりやすい。
米福さんはさすがの「弥次郎」、上方の 「鉄砲勇助」 だけど基本的な運びは同じだ。江戸っぽくて気持ちがいい。
遊吉さんは 「紀州」、僕は東京の寄席ではよく遭遇する噺、口跡きれいだな。
ボンボンブラザースの曲芸、客席のいじり方の見本みたい。曲芸やりながら客席におりて、そのまままた上がるのがすごい。
トリは遊馬さんで 「蒟蒻問答」,一年前にたまさんの会のゲストで聴いた。その時もよかったけれど、美声だな。滑舌もいい。坊主のいろんな符牒が楽しい。そして源助のキャラがとても面白い。二度聴いただけでどちらもとてもいい人そんなにいない。



12/17 「小ゑん・たま二人会@お江戸日本橋亭

トーク / 小ゑん・たま
あおもり / スピード狂の詩
小ゑん / 下町せんべい
たま / 妖刀村正
仲入り
小ゑん / アキバぞめき

そして夜は初めての日本橋亭、小ゑんさんは東京でも大阪でも何度か聴いているけれど、たまさんを関西圏以外で聴くのも僕は初めてだ。とにかくいろいろと楽しみが多い会だった。

まずは二人で登場してトークに。この会は小ゑんさんの新作の会なので当然小ゑんさんファンが中心、でも東京のたまさんファンもいる感じだし、大阪からの遠征組も何人かはいたようだ。そんな客席なので、かなりフレンドリーな雰囲気で始まったけれど、やはりおっちゃんが主力になっている。
トークの中で一番面白かったのが、江戸・上方の新作事情の違い。上方の新作派はストレートに笑いを求められると。それにしてもたまさんの分析力には客席かなり感心していたようだ。もうこの時点で受けること決まっていたようなものか。

そして開口一番はあおもりさん、白鳥さんのお弟子さんだ。2年前に鈴本で聴いた時とはとても同じ人と思えないほど見違えっていた。自作の新作で地元青森の噺、楽しかった。

小ゑんさん、一席目は「下町せんべい」、三代続いた江戸っ子のせんべい職人の噺。小ゑんさんの新作はかなり幅が広いというか、いろんな引き出しがあって、それがことごとく面白いのではないかと思える。たまファンの間では「ぐつぐつ」が一番有名なんだけど。それとジャズファンとしては新作でジャズ落語をぜひつくっていただきたいところだ。

たまさん、福笑さんの「人間でよかった」小噺をいろいろ披露してから、一席目はネタ出しの「妖刀村正」 新作と言ってもかなり古典テイストでスーパー定吉が大活躍する。そして村正、主人の意をくむのかくまないのかが分かりにくかったけれど、圧倒的なパワーで仕事をこなすのが爆笑。ようかん切ったり、そろばんはじいたり。この噺かなり好きになった。

仲入り後は再びたまさん、「千客万来」の予定からギャグの多い噺に変更するということで何かなと思っていたら「チェ・ゲバラ」 大阪で10日ほど前に聴いたところだけど、やっぱり面白い。だじゃれ連発がくどくならないのは、師匠の福笑さん同様だ。もう客席は立て続けに受けまくっていた。それにしても自分目当ての客は極一部の客席でこれだけうけるのは大したものだ。どこでも通用するていうことなんだろう。

そして、最後は小ゑんさんで「アキバぞめき」、僕はもちろん初めて聴くのだけど、ネタが出ていて事前の情報とかではめったにやらない大ネタらしくて期待していた。世界のサニーがかつての秋葉原を再現してそこに訪れるというノスタルジー。大阪の日本橋も同じように変わってしまったので、小ゑんさんほどマニアックじゃないけれど、感覚は分かる。それにしてもこれだけ専門的な型番や商品名を羅列して決して詳細分かっていない客席に受け続けるのはすごい。たまさんもそうだけど押しのパワーの強さなんだろうな。とても楽しく聴くことができた。いろいろとキュンとする場面があった。

お江戸日本橋亭初めてでいい会場だと思ったけどね。何か否定的な tweet を少し前にみたけどどういうことなんだろうか。



12/18  「鈴本演芸場・夜の部」

一花 / やかん
花ん謝 / 熊の皮
志ん陽 / 粗忽長屋
白鳥 / ナースコール
雲助 / 町内の若い衆
小菊 / 粋曲
琴調 / 安兵衛駆け付け
仲入り
歌奴 / 鼓ケ滝 
正楽 / 紙切り
一朝 / 柳田格之進

一花さん、きっちりした女流だ。東京の寄席で前座も名前出るようになったのはいつからだろう。
志ん陽さん、体形と声が何かリンクしていて楽しい。かなり達者だと思う。
白鳥さん、おバカなナース・みどりの噺。で、もちろん爆笑なんだけど、白鳥さんの新作は緩むところがなくてずっと疾走してる感じだな。聴いていてとても気持ちがよくなってくる。
そして雲助さん、今まで聴く機会がなかったのだけど、今日は代演で登場。ラッキーだった。噂通りなんとも佇まいのいい人で、言葉が自然にするすると身体に入ってくる。ぜひまた聴きたい。
そして前半最後は講談の琴調さん、以前東京のどこかの寄席でたまたま聴いた「徂徠豆腐」が抜群によくてすっかりやられてしまった。そして今日は安兵衛だ。この人もビジュアルからして人を引き付けるものがある。更に語りもいい。大仰なところはないのだけど、義士伝の世界に聴き入る自分を感じる。こういう講談なら何度も聴きたくなる。
そして仲入り明けは漫才のホンキートンク、こういう勢いのある中堅の漫才を普通に聴けるのも東京の寄席のいいところだ。
歌奴さんは「鼓ケ滝」、そう僕らはたまさんでいつも聴いてる演目だ。たまさんのは川西が舞台だけど九州のもあるという話だった。今日はその大分版で聴くことができた。噺の筋はほとんど同じだけど、いろいろと違いは鮮明だった。
正楽さんの紙切りでは、「柳田格之進」というリクエストがかかる。正楽さん、チクリとトリネタですからと言いながら、当たり障りのないところでと碁盤を囲む場面を切る。
最後は一朝さんで、その「柳田格之進」、以前聴いたことあると思って後で調べたら新治さんだった。かなり前だったけどまた聴きたいな。さて一朝さん、この噺も50両という金がからんで、格之進の娘の役回りも納得しにくい噺かもしれないけれど、やっぱり僕は番頭をどう描くかが大きいのではと思う。主人の意図に反して浪人中の格之進への当てつけで余計な動きをする、その意地の悪さと金が出て来てからのうろたえぶりがよく出ていた。最後に語られる娘のその後がハッピーエンドでいいのかもしれないけれど、噺として少し甘いのではと思っていたら、どうもハッピーではないバージョンもあるようで、そちらも聴いてみたいな。



12/19  「鈴本演芸場・昼の部」

きよひこ / 狸の恩返し
遊京 / 加賀の千代
仙三郎社中 / 大神楽曲芸
扇蔵 / 金明竹
菊之丞 / 親子酒
ホームラン / 漫才
馬風 / 漫談
市馬 / 粗忽の釘
小猫 / 動物ものまね
権太楼 / 代書
仲入り
ニックス / 漫才
はん治 / 鯛
アサダ二世 / マジック
扇遊 / 厩火事 

そして今日は「鈴本・昼の部」だ。こちらも結構なメンバーで楽しみだった。

遊京さん、いい味出してる。調べてみるとどうも京大出身のようだ。
菊之丞さん、相変わらず所作がきれいだ。荒唐無稽な噺だけどこの人がすると酔い方もいい意味で格調高く感じる。上方のんとは大分違う。
そして、ホームランが代演で登場。うれしい。寄席で何度も聴いてるけれど、ベテランのしゃべくりで東京の漫才では一番好きかもしれない。二人のしゃべりの緩急で絶妙な間が出る。で、客席に言葉を投げかけ直ぐに自分で拾って笑いに替える。阪神巨人と遜色ないと思うのだけど。大阪で聴きたいな。
市馬さんは「粗忽の釘」、いきなり女房が釘を打ってのところから始まる。どうしても「宿替え」と比べてバカバカしさが少なめだ。でもきっちりと「トンコ節」を披露。
小猫さん、先日繁昌亭で聴いたけど、やっぱりこちらの寄席が似合う。
仲入りは権太楼さんで、なんと「代書」。東京の代書聴くのは亡くなった喜多八さんに続いて二人目だ。権太楼さんがとても個性的な落語なので、代書もかなり濃くアレンジされた印象。権太楼さんも江戸っぽい演目でもっと聴きたい人だ。
扇辰さんは「悋気の独楽」、定吉がなにかえらくバカにみえる。商家の佇まいがみえにくい。
はん治さん「鯛」 擬人化しているようにみえなくて違和感があった。
そしてアサダ二世のマジック、この人もいいな。かなり高齢だと思うけれど、矍鑠としててエンターテイナーだ。
最後は扇遊さん、文之助さんとの二人会で毎年大阪の高座にも上がっているけれど、やっぱりさすがだ。まくらから流れるように江戸の空気を感じる。女性の表現いいし、所作も柔らかい。口跡も巻き舌的なのも似合う。そして最後に皿が割れるまでの夫婦のやりとりの盛り上がりがとてもいい。今回の最終日の最後にとてもいい高座を聴くことができて満足だ。

今日はなぜか上方でおなじみのネタが並んで、つい比べてしまってやや楽しめない部分もあった。遠征組の勝手だけど、やっぱりこちらでは江戸らしい噺を聴きたい。

とはいえ3日間で4回、十分堪能したし、特に東京の寄席の色物は強力だと改めて思った。これからも年に二度ぐらいは来たいと思う。そしてこちらの寄席と繁昌亭昼席の違いについていろいろと思うことはあるのだけれど、長くなるのでまた別の機会に。