2017.3.12 【笑福亭たま阿倍野独演会・春@阿倍野区民センター小ホール】

【笑福亭たま阿倍野独演会・春】

イメージ 1

去年の9月以来、二度目の阿倍野独演会だ。半年ぶりに来たけど、やっぱり異常に高座が高い。真ん中より後ろの人は見やすいと思うけど、僕は三列目だ。普通に見上げて座布団がみえない。この高座つくるのかなり大変だろうなとか思っていたら開演のベルが鳴った。ホントに鳴ったか。鳴った気がした。

りょうば / 強情灸
紫 / 風呂敷
たま / ガマの油
たま / 人形買い
仲入り
銀瓶 / 持参金
たま / ショート落語~俺の子
 三味線:はやしや律子

りょうばさん声が大きい。というか、PA のボリュームがでかすぎるのか、少しうるさく感じた。でも聴いてるうちに慣れてきてやはりうまくなったなと。だけど、そのうまさに年季が追い付いていないというか、何か妙な印象もあった。見た目からしても実年齢よりずっと若いし、年季明けて間がないというキャリアにも違和感のない雰囲気だ。だけど落語は結構熟成してる。もっと時間が経てばこんな感じは薄れてくるんだろうけど、どちらにしてもこの先楽しみだ。

続いて紫さん、男の嫉妬のことをいろいろと。そしてかつて自分は宮沢りえと同じ顔だと思っていたと。
で、そこから 「風呂敷」 ,九雀さんで以前聴いた事あるけれど、基本江戸ネタだ。でも最近演者だけでなく、ネタの東西交流もすごく盛んで、僕らとしてもいろいろ楽しい。この噺、「紙入れ」 なんかに近い噺だけど、設定がむちゃというかもう艶噺というより滑稽噺になっていて、女房よりも二人の男が中心になってくる。紫さん、その無茶な設定をいかにもありそうに見せてるのがいい。しかし、最近の都一門の人達はネタの吸収に積極的だな。

たまさん、上がって 「今日は太融寺南天さんの会があって、お客さんが重なるなと思っていた」 見回してチェックしてるのかな。〇〇さん来てないとか。たまさんと南天さんの会ってほとんど重ならないのは調整されてるのかな。で、今回はどうしようもなかったんだろう。僕はこっちのチケット早くから持っていたからこっちに来たけど、やっぱり両方行きたかったな。そこから長いまくら。森友の件、四代目の件、そして繁昌亭昼席の集客の件。
さんざん受けた後、また話を変えて 「この中で落語会でケータイ鳴らしたことある人?」 数人手をあげる。「そしたら、他の人がケータイ鳴らしてむっちゃ迷惑した、ことのある人?」 僕も含めてそこそこの人が手をあげる。
「じゃあ最後に、ケータイ鳴ってもあんまり気になれへん、て思う人?」 残りの多数派が手をあげる。ここでたまさん、「今手を上げた人、ケータイもう一度チェックしてください」 遊方さんと落語会のケータイ問題について話していて、今最後に手をあげた微妙に心の広い人が鳴らすのではという結論になった。だから遊方さんも自分の会で同じこと訊くはずと。これは確かにそうかもしれない。ケータイにうるさい人は、人一倍自分が鳴らしちゃいけないと思っているから。 
そんなたっぷりまくらから 「ガマの油」、たまさんのは元々後半の酔っ払いがとても楽しかったんだけど、今日は益々エスカレートして爆笑の連続だった。僕はこの噺、以前から形にはまりすぎな感じで好きじゃなかったんだけど、たまさんのおかげですっかり印象が変わってしまった。

続いて二席目は 「人形買い」、たまさんで二度目、最近はあまり掛からない噺だ。端午の節句の返しに人形買いに行く噺、講釈師とか八卦見とか、祓い給え屋とかが長屋に住んでいて、いろいろわちゃわちゃと、例によってたまさん結構カットしてると思うけど、こういう昔の風俗がうかがえる噺はいいな。結局僕が落語を好きな一番のルーツだろうな。もっと聴きたい噺だ。

仲入り後は銀瓶さん、それほど聴く機会多くないんだけど、たまさんの話から始めた。僕はやっぱり誰かの会のゲストの人はその誰かについてしゃべってほしいなと思う。客席もそれを期待してるのだから。でも銀瓶さん、今日はかなりブラック、で、たまさんを認めてはいるけどあまり飲みたくない、らしい。仲良さそうやけどね。
ところで、このホールやっぱり PA のボリュームが大きくて、ここまで演者三人ともそんな傾向だったけど、銀瓶さんはすごく聴きやすい。多分マイクとの距離とか、使い方がうまいんだろう。
そこから噺は 「持参金」、これも落語らしいよくできた噺だ。銀瓶さんで何度か聴いてるけど、当事者同士がすべて分かった時の表情がいい。そこで、手拭いを20円に見立ててまわしていく、ここ好きだな。
銀瓶さん、今日はまくらもネタもよかった。独演会のゲストとして理想的、さすがだな。

最後たまさん、ショート落語は森友、献血、右翼のスピーチとかかな。でも何かたまさん、最近ショート落語の切れ味が今ひとつな気がするのだけど。そこから噺は 「俺の子」、完成した形でこの間東京で初めてやったと。
で、聴いてみると、これ原型は 「母子センター」 だな。12月のできちゃった、でのネタおろしだったはず。たまさんの新作は結構未完成な素材的な状態でも出てくるので、こんな風にいろいろつながって出来上がっていくのをみるのも楽しい。これも聴き手の想定を上回るスピード感で噺が進んでいく。ウミガメ産卵のビデオまで登場した。

今回も楽しかったのだけど、僕自身2回目になるこのホールはやはりあまり好きになれない。音響の問題、高座の問題。次回は6/11にこのホールで、だけど7月から使えなくなるって聴いた気がするのだけど。そしてたまさん、来年ここの大ホールで独演会するって発表済みだし。650キャパぐらいかな。実現したら今までで一番大きなキャパになるけれど、もうそろそろ自分だけでマネージメントするのが限界に近づいてるようにも思える。やっぱり事務所法人化して社長業も兼ねる方向に行くのだろうか。